原子力安全条約・特別会合が閉幕 有効性強化で作業部会設置

8月27日からウィーンの国際原子力機関(IAEA)本部で開催されていた原子力安全条約(CNS)の第2回特別会合(=写真)、および2014年の第6回レビュー会合に向けた組織会合が31日に閉幕した。福島事故を踏まえて原子力発電所における長期的な安全性を確保していくため、条約の有効性強化と透明性の向上について検討する作業部会の設置で参加国が合意。ピア・レビュー作業の効果改善を含め、CNS強化に向けた行動リストを次回のレビュー会合までに準備するほか、今回会合で2か国から提案のあった条約文の改正等についても考慮していくとしている。

今回の特別会合には、CNS加盟75か国のうち64か国が参加した。最初の2日間では福島事故の教訓から、(1)外的事象(2)設計に係わる課題(3)過酷事故管理とサイトの復旧(4)国内組織(5)緊急時の準備体制と対応および事故後の管理(6)国際協力――の各分野に関する作業セッションを実施。事故後に各国で取られているアプローチの実態情報を収集し、主要な共通課題の特定と議論を行った。

福島事故以前、過酷事故対策は国毎に異なる出発点から、異なるレベルで取り組んできたが、同事故により各国が自然災害への安全対策を再評価。新たな対策の特定につながったとしている。考慮すべき事項としては、(1)外的事象の再評価と定期的な安全評価(2)設計想定以上の過酷な自然現象への対応(3)新規炉における自然災害に対する安全措置改善(4)過酷な自然現象に対する事故管理対策の改善(5)規制当局の独立性確保措置(6)透明性の確保――等が抽出された。

こうした事項は次回のレビュー会合における国別報告書に反映され、CNSのピア・レビュー作業を一層堅固なものとするために役立てられる。

特別会合ではまた、2〜3の本会議を開催し、条約の有効性を高めるための義務事項強化など、指針等の修正について議論。米国や英国、仏国、ドイツ、ロシア、韓国、スペインなど11か国が条約運用指針書の改訂案を提出したほか、ロシアとスイスが条約文そのものの改正案を提出した。

指針書の改訂は審査プロセスを一層効果的に、また、国別報告書を一層包括的にするのが目的。IAEA安全基準の活用や規制機関の効果的な独立の重要性、IAEA安全ミッション等の受け入れの更なる促進、外部評価の公表など透明性の向上等について議論した結果、全会一致で改訂版への合意が得られ、次回会合の国別報告書に反映されることになった。

一方、条約文の改正は参加国の批准などの手続きが必要。スイスが以下の点で修正や新規項目を追加する必要性を指摘した。すなわち、IAEAの行動計画に基づき、各国の規制当局そのものの適切さについても定期的に外部専門家が審査する、規制当局による原子力安全に関する調査結果や決定を一般にも公開する、原子力関連施設を建設・起動する前から閉鎖に到るまで包括的な安全評価が行われるよう、加盟国が適切な措置を講じる。

また、最新の科学技術に基づきすべての安全関連ファクターを必要に応じて再評価する、IAEAの要件に準じて原子力施設の設計や操業の安全性を外部専門家が審査する――などとしている。


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