エクセロン社が新設計画断念 米国

米テキサス州でビクトリア・カウンティ原子力発電所の建設構想を進めていたエクセロン社は8月28日、同構想で政府から承認を得るのは断念すると発表した。近年の天然ガス価格低下や市場状況などから、予測しうる将来に原子炉を新設することは経済的でないとの結論に達したもの。ビクトリア郡南東部のサイトについて申請してあった早期立地認可(ESP)については、すでに米原子力規制委員会(NRC)に取り下げを連絡済みだとしている。

エクセロン社は2008年、GE日立製ESBWR(高経済性・単純化沸騰水型炉)2基の建設を想定した建設・運転一括認可(COL)をNRCに申請したが、同設計が認証取得前であったため09年3月に採用設計をABWRに変更。同年7月にはCOLの申請を取り下げ、最終的な建設決定まで20年間有効なESPを先に取得する方針を明らかにしていた。また、昨年5月にコンステレーション社を合併吸収した後は、400万kW以上のガス火力および風力発電設備をテキサス州で操業している。

2007年以降、経済発展に伴う電力需要の拡大、原油や天然ガス価格の変動、温室効果ガスの排出抑制効果などを背景に原子力が世界的に再評価されようになり、米国でもこれまでに17件・26基分のCOLがNRCに申請された。このうち4件・8基分についてはすでにメーカーとのEPC契約が結ばれており、NRCは今年2月、34年ぶりとなる新たな建設認可をボーグル増設計画に発給している。

しかし、リーマン・ショックを引き金とする世界同時不況、近年の天然ガス価格の下落およびシェールガスの開発規模拡大などにより、世界のエネルギー事情は徐々に変化。GE社のJ.イメルト最高経営責任者は7月末、英フィナンシャル・タイムス誌のインタビューの中で、「原子力はその他のエネルギーと比べてコストがかかりすぎ、経済的に正当化するのは非常に難しい状況だ」と断言。多くの国が安価な天然ガスと再生可能エネルギーの組み合わせにシフトしていくとの考えを述べた。

こうした状況は、米国で新設プロジェクトを成功裏に進めるにはボーグル計画のように政府の融資保証適用を受けるか、地元州政府から建設期間中の財政コスト回収が認められない限り難しいとの見方を改めて後押し。今回、米国最大の原子力発電会社のエクセロン社が取った決断に、今後他社が続く可能性も否定できないと見られている。


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