米規制委が安全強化指令で 「暫定スタッフ指針」の最終版 福島の教訓から、対応策の特定等を支援

米原子力規制委員会(NRC)は8月31日、福島事故の教訓を反映して策定した国内104基の原子力発電所の安全強化対策指令に関する「暫定スタッフ指針(ISG)」の最終版を公表した。(1)設計基準を超える事象による電源喪失影響の緩和戦略(2)使用済み燃料プールの計装機器強化(3)福島と同型の格納容器保有炉のベント系統の強化――という指令に事業者が従う際、必要な具体策の特定を支援するのが目的。ISGは強制事項ではないが、事業者が指令要件を2016年末まで、あるいは二度の燃料取り替え停止完了までのどちらか早い方で満たせるよう、許容可能な取組み手法を示す内容だ。

福島事故の直後、NRCは直ちに同事故の分析特別タスクフォースを短期と長期の2本立てで設置。このうち、短期チームは同年7月、事故後最初の90日間に実施した審査報告書をNRCに提出し、「米原発では同様事象の発生確率は低い」とする一方、改善の必要な規制で12の包括的勧告事項を提示した。その後、タスクフォースはこれらを優先度の高いものから3段階に順位分けするとともに、項目の追加や修正を実施。NRC委員による承認を経て、今年3月にNRCとして初めて、勧告事項に基づいた3種類の規制要件を国内原発に発令した。これらの指令を適切に実行するためのISG案文は5月からパブコメに付されていた。

第1の指令は全原子炉を対象に、9・11以降配備された簡易安全機器の防護を改善し、全原子炉と使用済み燃料プールに十分な支援機器の設置を求める内容。ISGとしては、発生水素を爆発レベル到達前に燃焼する機器のための非常用電源配備など、全電源喪失シナリオに対応する指示書の見直しを承認している。

2番目の指令はマークIおよびU型の格納容器を保有するBWRが対象。I型格納容器の原子炉は事故時の炉心損傷を防ぐため設置されているベント・システムの改善を、U型ではそうしたベント・システムそのものの設置が義務付けられる。このためISGでは、ベントに関する一層詳細な技術情報を提供。同時に、放射能による有害な状況下で運転員の措置に頼ることなく機能を果たせるベント設計や操作手順についても明記した。

3つ目の指令は、すべての使用済み燃料プール毎に改良型の水位モニターを設置するよう要求。ISGは新たな機器によって正確な報告を要求される詳細な水位レベルのほか、電力供給や機器の搭載基準、人材訓練その他の基準を特定している。


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