安全確保の中核「最後は人」 最後の安全委員会 今後を展望し幕引き

原子力安全委員会は18日、臨時会議を開催(=写真)し、新法施行に伴う同日での廃止に当たり、福島原子力災害への対応を中心とした活動を振り返った上で、今後の原子力安全確保への展望を取りまとめ発表した。

同委員会は、1978年10月に、原子力委員会から分離する形で発足し、以来、行政庁から独立した中立的立場で安全規制に関する基本的考え方や指針類の策定、原子炉設置許可等に関するダブルチェック審査、事故発生時の緊急助言活動などに係わってきたが、19日の原子力規制委員会発足を受け、34年間の歴史に幕を閉じることとなった。

最終回となった18日の発表文書では、11年3月の福島第一発電所事故について、「誰もが起きてはならないものと考えていたシビアアクシデントがわが国で現実に起こったもの」として、事故を未然に防げなかったことに対し、反省の意を表明している。また、安全審査指針類の整備が不十分との認識のもと、10年12月に同委施策の基本方針を改定、安全の基本原則の明文化などに着手して間もなく、事故発生となったことにも悔いを述べている。

安全委員会では、事故発生からの約1年半、法律に基づき、原子力災害に対応する技術的助言を数多く行ったほか、シビアアクシデント対策の検討、安全設計指針、防災指針などの見直しに取り組んできたが、途上となっている検討状況については、新たな規制組織において、法令要件化や技術基準等に反映されるよう取りまとめの中で要望した。

また、同委が11年7月、経済産業省宛に要請した総合的安全評価、いわゆる「ストレステスト」については、2次評価も含め速やかに実施することが重要であるとし、新組織において、その取組を定着させ、安全対策の継続的改善が実現するよう求めている。

さらに、今後の原子力安全に向け、事業者による「安全確保に関する一義的責任の自覚」を強く訴えた上で、規制組織には、中期的な規制政策および最新の知見に基づく安全基準を定めるとともに、事業者がこれに満足せず、最高の安全水準を目指し努力していることを確認すべきとした。

各委員は、最終会合に際し所感を述べたが、「原子力安全の全体を理解できる人材、強い使命感のある若い世代を期待」(班目春樹委員長=写真中央)、「自分自身に起こりうると考えないことには事故から学ぶことはできない」(久木田豊委員)、「放射線管理のルールは当事者への丁寧な説明が必要」(久住静代委員)、「原子力はエネルギーだけでなく医療、工業にも利用されており、人材育成、研究の拡充は欠かせない」(小山田修委員)、「大学等においても実験が衰退しているが、重要なのはモノに触れながら安全を守ること」(代谷誠治委員)など、常にリスクの存在を肝に銘じる謙虚な姿勢、また、安全確保の中核となる要素は「人」であることを異口同音に強調した。


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