緊急時対応計画策定へ UAEの原子力導入計画

アラブ首長国連邦(UAE)初の原子力発電所導入計画を進めている首長国原子力会社(ENEC)は9日、国家緊急時危機災害管理庁(NECMA)と原子力発電所における緊急時オフサイト対応計画の策定で協力覚書(MOU)を締結した。

NECMAは2007年に発足した連邦機関で、首長国や地域レベルに関係なく災害や緊急事態、危機的状況が発生した際、すべての関係機関と調整し、協力して管理にあたる責任を負う。

UAEでは今年7月、首長国の1つであるアブ・ダビ西部のブラカでENECが原子力発電所の建設作業を正式に開始したことから、初号機が完成する2017年以降を見据え、国際社会で最も厳格な安全基準を満たした発電所とするための一側面として、緊急時計画の策定を含めた準備対策でNECMAと協力することになった。具体的な計画と戦略目標の策定では、UAEのすべての関連省庁や機関、組織の力を結集することになる。

米輸出入銀行がブラカ原発建設で融資

ブラカ発電所計画では2009年末に韓国電力(KEPCO)の率いる企業連合が出力140万kWのPWRである「APR1400」を約200億ドルで4基建設する契約をUAEから獲得したが、米国の輸出入銀行(EIB)の理事会は7日、ENEC傘下のブラカ・ワン社に対して20億ドルの直接借款を提供すると発表した。

APR1400設計の基幹部分は元々、CE社(後に米国籍のウェスチングハウス(WH)社が吸収)が米原子力規制委員会(NRC)から設計認証を受けた「システム80+」の技術をベースにしているため、UAEへの輸出には米政府の同意が必要。WH社は協力企業としてKEPCOの企業連合に参加し、原子炉の冷却材ポンプや設備、計装制御機器、エンジニアリング・サービスのほかに人材育成でも製品とサービスを輸出予定で、EIBはこれらの保証責任を引き受けることになったもの。

UAEに対するEIBの貸付としては過去最大規模であり、新規立地の原発建設に対する融資としては90年代後半以降、初めての案件だとしている。同計画への融資を決定するに当たり、EIBは詳細なリスク評価を広範囲に実施。米国勢調査局の統計等を元に見積もった結果、今回の融資は国内17州で米国民5000人分の雇用支援につながるなど、米国経済にとって非常に重要だと結論づけた。

また、この融資案件については米国家安全保障会議に加えて、国務省とエネルギー省(DOE)も支持。UAEとは09年に二国間の原子力平和利用協力(123条)協定を締結したのに続き、翌10年にはNRCとUAEの連邦原子力規制庁(FANR)が原子力安全と保障分野における協力および技術情報交換で合意文書を交わした点を強調しており、核不拡散上の問題はないとの考えを表明している。


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