中長期的にぶれない視点を 原産理事長 新大綱策定会議廃止に意見

日本原子力産業協会の服部拓也理事長は12日、原子力委員会の新大綱策定会議の廃止を受けてコメントを発表した。

原子力委が2日に、一昨年から審議を進めてきた「新大綱策定会議」の廃止を決定し、今後の原子力政策は「エネルギー・環境会議」の場を中心として確立することになったことから、「同会議における革新的エネルギー・環境戦略策定の議論の過程を振り返ると、今後の原子力政策確立に際して、いくつかの点で危惧を抱かざるを得ない」として、以下の通り、4つの視点から懸念を指摘している。

(1)「専門的視点」

原子力利用の分野は、技術的専門性が高い分野である。日本が原子力の平和利用を続けていくのであれば、その研究開発等、技術的専門性を有する専門家の意見を幅広く聴取した上で、策定する必要がある。エネルギー・環境会議の場に、原子力専門家の意見を十分に斟酌できる枠組を設定すべきである。

(2)「中長期的視点」

原子力政策はエネルギー政策の重要な柱をなすものである。原子力の基盤である技術・設備・人材等の維持や育成も含め、これらについては中長期的な視点を持って考える必要がある。

(3)「継続的視点」

現在までの原子力は、これまでの国家的議論の積み重ねと、その結果としての原子力政策に協力いただいてきた、立地地域との信頼関係の上に成立している。

政策の策定にあたっては、今日までに至る経緯を踏まえた継続性が考慮されるべきであり、大きくぶれる政策は国益の損失に繋がる。今後の原子力政策策定に際しても「中長期的にぶれない」政策が求められる。

(4)「国際的視点」

日本の原子力政策の影響は国内だけに留まらない。再処理から生じているプルトニウムの利用計画への海外の注目、日本がこれまで貢献してきた世界の核拡散防止に向けた取り組みへの影響、日本の原子力技術に期待を寄せている原子力新興国の目線など、諸外国からの視点もしっかり考慮した上で、日本の原子力政策が策定されることが必要である。

原産協会では、4つの視点を原子力政策検討のプロセスに含めると共に、エネルギー・環境会議での政策決定に至るプロセスの透明性、公開性の確保と、その決定内容を行政に反映させる仕組の明示もなされるべきと考える。

今回、新大綱策定会議の廃止が決定されたが、今まで大綱があることにより、国を挙げてのぶれない方針に基づき、国、自治体、電力、メーカーが一つの方向性に向けて、エネルギー産業の柱を支えてきたのも事実である。従って、今日まで大綱の果たしてきた役割が、新しい仕組みの中に確実に反映されることを望みたい。


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