トリノ原発の廃止措置を加速 イタリア

チェルノブイリ事故後に4基の稼働中原子炉すべてを閉鎖したイタリアで、それらの廃止措置作業の完了を加速する政令が初めて、トリノ・ベルチェレッセ原子力発電所(=写真)(PWR、27万kW)に適用されることになった。

イタリア北部、スイスとの国境に近いピエモンテ州にある同発電所は1965年に運開したが、1987年の国民投票の結果を受け、1990年に閉鎖。同じ頃に閉鎖された3基も含め、すべての原子力発電施設がイタリア電力公社(ENEL)から「原子力発電管理会社(SOGIN)」に移管され、それぞれの廃止措置作業が開始された。

1999年になると、同国政府はテロリズムに対する懸念等から廃止措置作業の完了を前倒しする政策を決定。作業の許認可に要する期間短縮も含め、SOGINが廃止措置計画のさらなる短縮化について再検討していた。

SOGINの11日付けの発表によると、同国の経済発展省は8月2日にトリノ原発に対する廃止措置完了政令の適用を承認。同発電所は作業短縮のための政策的措置を受けた同国初の閉鎖原子炉となった。作業の完了は24年までの12年間とし、総経費は2億3400万ユーロを予定。工程は4段階に分けられており、(1)既存の中間貯蔵施設の改造(2)廃止措置作業支援施設の建設(3)原子力系統設備内のシステムおよび機器の解体(4)サイトの復旧――をこなしていく計画だ。

現時点では、主な作業として冷却塔の取り壊しや蒸気発生器(SG)の除染、緊急用ディーゼル発電機が保管されていた建屋とタービン建屋内の機器の解体、および汚染されていない補助建屋の撤去などを実施。総予算のうち3400万ユーロがすでに支払われたほか、5200万ユーロが廃棄物の貯蔵関係に使われたとしている。

SOGINの予想では、トリノ原発の解体ににより21万4000トンの廃棄物が発生するが、このうち放射性の廃棄物は2000トン程度。これらは建設が検討されている国家処分場が完成するまで、発電所敷地内に安全に保管されることになる。

2024年に放射性物質による制約がすべて取り払われたと判断されれば、同サイトはその後、全く別の目的に再利用される予定だ。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで