原子力技術の蓄積大切 原文振シンポ 「一時の論調に流されるな」

日本原子力文化振興財団は19日、「『福島』と考えるこれからの日本――新たな社会の創造とエネルギー問題の行方」をテーマとしたシンポジウムを都内で開催(=写真)し、今後の福島県の復興や日本のエネルギー問題の行方、そして原子力発電の今後などについて各界識者が集まり、議論した。

評論家の金美齢氏は、「震災、原子力事故を超えて、いま日本に必要なこと」と題した特別講演を行った。戦争や学生運動、バブル経済などの例を挙げながら、日本人はその時の論調に一気に流されてしまう「オール・オア・ナッシング」の傾向があることを指摘し、物事には常にメリットとデメリットがあるので、なるべくデメリットを減らしながらメリットを増やす方法を考えていくことが大切だと語った。その上で原子力発電について考えると、福島原子力発電所の事故はあったが、これまで培ってきた技術の信頼性は高く、日本に残されたカードが「技術立国」であるのは間違いなく、全ての蓄積を捨ててしまうのは愚かしいことだと主張。今や電気は必要不可欠なライフラインで、原子力のリスクを管理しながらさらに技術を深めていくため、我々が持つ人材や能力をフル回転させながら、良い方向へ進めるべく努力していく必要性を訴えた。

パネル座談会には、遠藤雄幸・福島県川内村長、奈良林直・北海道大学大学院教授、橘川武郎・一橋大学大学院教授、山下俊一・福島県立医科大学副学長、澤昭裕・21世紀政策研究所研究主幹を迎え、宮崎緑・千葉商科大学政策情報学部長がコーディネーターを務めた。

遠藤村長は、「目で見え、肌で感じる復興が望ましいが、様々な許認可手続きに時間がかかってしまう」との実情を語った。澤氏は「予算がついた途端に国が権限を持ってしまい、地方の権限が中途半端になってしまう。今は賠償のために地元に入っている東京電力が前向きに復興に携わっていくのも一案では」との考えを示した。橘川教授は、「東京目線で復興を考えてはならない。福島は自然の豊かなところなのでそれを活かした再生に携わっていきたい」と決意を表明した。


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