ABWR型式認証後、建設へ 独電力のホライズン社買収 20年代前半に運開 日立 英電力社株を取得

日立製作所は10月30日、英国で原子力発電開発事業を展開しようと計画していたドイツ資本の原子力発電事業会社ホライズン・ニュークリア・パワー社の全株式を取得する契約を同日締結したと発表した。ホライズン社が所有する英西部海岸のウィルファとオールドベリーの2サイトに、130万kW級ABWRをそれぞれ2〜3基建設する計画だ。初号機は2020年代前半に運転開始をめざす。株式の購入額は約890億円で、日本メーカーによる外国の原子力発電会社の全株式取得は初めて。枝野幸男経産相も同契約締結を歓迎すると共に、英国の原子力安全の向上に貢献することを期待する声明を発表した。

英国では労働党前政権が始めた大規模な原子力発電所更新計画を、2010年に発足した保守党の連立政権が「公的な補助金を出さない」ことを条件に継続。ホライズン社が確保したアングルシー島のウィルファ、グロスターシャー州オールドベリーの2サイトで新設計画を日立が引き継ぐことになる。

ホライズン社はドイツの電力会社RWE社とE・ON社が50対50の出資比率で2009年1月に設立。資本金5億4000万ポンド、従業員約110名。英国の同2つの既存サイトで用地を確保済みで、最大660万kWの原子炉建設を計画していた。しかし、福島事故を受けたドイツ政府の脱原子力政策により、独国内で所有していた複数の原子炉が閉鎖に追い込まれるなど経済的に大きな打撃を受けた。こうした状況から、これら2社は今年3月に建設計画からの撤退を決め、ホライズン社の新たな所有者を募集していた。(=3面に撤退の関連記事)

同社の売却を巡り、水面下ではロシアのロスアトム社、仏アレバ社と中国広東核電集団有限公司(CGNPC)連合、東芝とウェスチングハウス(WH)社連合などが購入に関心を示していたと伝えられていたが、最終的に日立に決まった。

日立はすでに英国のバブコック・インターナショナル社、ロールス・ロイス社、およびカナダの建設エンジニアリング会社であるSNCラバリン社と協力覚書を締結。関連企業である日立GE・ニュークリア社、GE日立ニュークリア社および燃料製造会社のグローバル・ニュークリア・フュエル社などの他、世界中の原子力関連企業とも協力して、同プロジェクトを進めていく方針だ。

現在、ウィルファとオールドベリー両原子力発電所には古いガス冷却炉(GCR)が各2基あり、原子力デコミッショニング機構(NDA)が所有、マグノックス社が両サイトの運転を担当してきた。オールドベリーの2基はすでに昨年6月と今年2月に閉鎖され、ウィルファ2号機も今年4月に閉鎖。同1号機のみが運転中だ。

新設炉はこれらの隣接地に建設されることになるが、日立としては今後、新たな出資者や原子力発電所の運営を担当する電力会社などの協力を募ることになると見られている。

また、ホライズン社は採用設計として、英国政府の包括的設計審査(型式認証)を受けた仏アレバ社の欧州加圧水型炉(EPR)かWH社のAP1000を候補としていたが、日立は「世界で唯一運転実績を持つ第3世代原子炉であるABWR」の建設を提案。ホライズン社の買収手続きが11月に完了し次第、英国政府による次回の型式認証プロセスにABWRを申請するなど準備を進める方針だ。

日立の計画では、建設段階で各サイトに5000人〜6000人の建設作業員を投入予定、運営開始後もサイト毎に約1000人分の雇用が創出されると見込んでいる。建設ではモジュール工法を活用し、英国内にモジュール組立て施設を設置する。現地調達を通じて地元の経済発展と、英国の社会インフラの発展に貢献していきたいとしている。


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