中国・国務院が原子力発電計画承認 新規計画の審査・承認画の審査・承認再開

中国の内閣に相当する国務院は10月24日、温家宝首相(=写真)を議長とする常務委員会で2020年までの「原子力発電安全計画」と「中長期原子力発電開発計画」を承認した。これにより、福島事故直後から暫定的に停止していた原子力発電所の新規計画および建設前準備工事の審査・承認が再開されることになったが、さしあたり内陸部への新規立地は行わないほか、第3世代原子炉の安全基準を厳守するなど、安全性確保に最大限に留意し、秩序だったペースで進めていくとの方針を打ち出している。

国務院は声明の中で、「安全性こそ原子力発電の命綱だ」と断言。福島事故後、国内の稼働中・建設中原子炉に加え、計画中のプロジェクトや研究炉等を対象に実施した包括的安全審査の結果に基づき、国務院は今回承認した2つの計画を二度にわたり綿密に審議した。

原子力の安全性と開発に係わる課題については極めて厳粛かつ注意深く扱ったとした上で、「今後数年間で中国は合理的な建設ペースにより通常の原子力発電所建設に戻るとともに、着実かつ秩序立てたやり方で建設を推進していく」と明言。世界の建設中プロジェクトの4割を中国が占めるなど、福島事故前に一部の当局者から「計画性と秩序を取り戻すべき」との懸念が表明されていた建設ラッシュ状態をトーンダウンさせる政策が明確に示された。

また、新設プロジェクトの立地点に関して国務院は系統立った配置を考案すると述べ、2015年までの間は内陸部への立地は行わないほか、適切な妥当性評価を通じて沿岸部に数か所の建設を実施する方針を表明。内陸部の原発は冷却水を近隣の河川から取水するため、干ばつ等に伴う冷却水確保の難しさを考慮する形となった。

国務院はさらに、新設プロジェクトに対しては国際的に最も厳しい安全要件を課すとし、第3世代原子炉の安全基準を厳守すると説明。今後の新設計画が最新鋭の第3世代設計に絞られる方向にあることを示唆した。

このほか、国務院は原子力発電所の計画から建設、運転、閉鎖後まで一貫して、安全第一の原則を貫かねばならないと強調。既存炉については安全性改善措置を絶えず取っていくが、その際は世界でも最先端の、しかも十分成熟した技術を適用していく考えだ。また、安全性関連技術や機器の研究開発を一層進めるとともに、原発の安全基準に関する法と規制のシステムを整備し、事故時の管理・対応能力を増強するなど、安全管理をさらに徹底強化していく方針を表明している。

なお、国務院の報道弁公室は同日、2012年版のエネルギー政策白書を公表し、省エネルギーと再生可能エネルギーの開発推進を中心に生態環境を防護しつつ持続可能なエネルギー源開発を中国が進めていくことを明らかにした。

原子力発電に関しては、中国のエネルギー構造を合理化しつつ供給を保証するため、安全かつ高度に効率的に開発していくと指摘。現在、中国の原子力発電シェアが総発電電力量の1.8%足らずと世界平均の14%を大幅に下回っていることから、2015年までに原子力の設備容量を4000万kWまで拡大する計画だとしている。


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