安全担う人材など強化 エネルギー・環境会議 原子力技術維持策で

エネルギー・環境会議は27日、「革新的エネルギー・環境戦略」の進捗状況を整理し、そのうち、原子力人材・技術の維持・強化策について、経済産業省と文部科学省による中間報告が示された。その他、原子力委員会見直しに向けた有識者の意見、および省エネ、再生可能エネを最大限引き上げながら、わが国の成長や産業の海外展開を目指す「グリーン政策大綱」の骨子も国家戦略室から示され、いずれも年内目途に成案を取りまとめていくことを確認した。

10月に同会議がまとめたエネルギー・環境戦略の進め方で、原子力政策については、(1)核燃料サイクル(2)人材・技術の維持強化(3)国際社会との連携(4)立地地域対策の強化(5)原子力事業体制と損害賠償制度――の各項目と、原子力委員会見直しが具体化すべき内容としてあげられており、そのうち、人材・技術の維持・強化策と原子力委見直しは、年内までの取りまとめを求められている。

経産・文科両省による原子力人材・技術の維持・強化策ではまず、エネルギー・環境戦略中の関連する記載を踏まえ、日本の原子力産業が、研究・設計・建設・運転・廃炉等の広範な分野の人材により支えられているとの認識に立ち、主要な課題を(1)廃止措置等の新たな課題(2)原子力安全に係る国際貢献における課題(3)重要電源として活用するための課題――に整理した上で、それぞれについて取組方針を述べた。

新たな課題に対応するための研究開発や人材育成については、福島第一廃止措置関連の体制強化や、中長期的には、燃料デブリの性状把握や事故解析・評価等の重点分野ごとにポテンシャルを有する大学などを中核拠点とした基礎研究を進めていくこととしている。

原子力発電の活用に関しては、安全を担う人材・技術の散逸防止に資する立地地域の雇用対策支援、事故の教訓を踏まえ多分野の知見・技術を導入した基礎・基盤研究強化を推進するとともに、「生きた仕事」がないことによる人材・技術の喪失に鑑み、原子力プラントの海外展開などを通じて、事業化評価、設計、機器製造、建設等の機会を確保し、有能な人材の育成、技術力の強化を図っていく。

原産協会の資料によると、世界の原子力発電所建設は、新規着工件数で1974年にピークとなり、86年のチェルノブイリ事故後は、停滞してきたが、近年になって新興国を中心に巻き返しを見せるなど、盛衰の歴史がある。強化策では、この点についても、データを掲げ、例えば、79年のTMI事故以降では、米国を始め、世界的に新規着工が減少し海外展開が困難となり、多くの企業が原子力事業から撤退するなどした結果、米機械学会の認証する原子力規格(N―スタンプ)取得企業が、世界中で600社(80年)から200社以下(07年)にまで減少したことを示し、技術力の低下傾向を危惧している。


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