イランの平和利用未確証 IAEA天野事務局長が報告

国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長が16日付けでまとめたイランに関する最新の報告書で、同国がNPTの保障措置協定や国連安全保障理事会決議の条項に反してウラン濃縮設備の増強を継続していることが明らかになった。同事務局長は「イランから必要な協力が得られないため、同国で未申告の核物質や活動が存在しないという確かな保証を明示することができず、核物質が平和利用のみに使われているとは断定できない」と結論付けている。

この報告書は事務局長がIAEA理事会と国連安保理用に準備したもので、前回の報告書をまとめた8月以降、イランにおける申告施設での保障措置と安保理決議条項の履行状況を記している。

それによると、イランの濃縮施設としてはまず、ナタンズに濃縮度5%の遠心分離法・濃縮工場(FEP)が2007年から稼働中のほか、研究開発用に濃縮度20%の濃縮を行うパイロット濃縮工場(PFEP)が2003年から稼働している。また、コム市近郊のフルドウでは遠心分離法・濃縮工場(FFEP)が2011年に運開しており、濃縮度5%と20%の六フッ化ウランを製造中となっている。

FEPでは11月10日現在、1万414台の遠心機を設置済み。このうち991台が事務局長が前回の報告書をまとめて以降に増設されていた。10月下旬から11月上旬までにIAEAが実施した実在庫検認(PIV)によると、この期間に1576kgの天然六フッ化ウランから160kgの5%濃縮ウランを生産。同工場が生産開始して以降の5%濃縮ウラン生産量は、前回報告書以降735kg増の7611kgに達した。

一方、FFEPには16のカスケード(遠心機2784台)が設置されており、前回の天野報告以降、イランは新たに644台の遠心機をFFEPに設置した。2011年12月の操業開始から今年11月上旬までに、同施設では693kgの5%濃縮ウランから95.5kgの20%濃縮ウランを生産したことになるが、IAEAはこれらのうち73.7kgを確証したとしている。

また、軍事目的の利用が疑われる施設について事務局長は、「2011年11月以来、公式・非公式を含めて多くの協議をイラン側と重ねたにも拘わらず、具体的な成果は得られなかった」と明記。イランは核兵器関連の研究が行われた疑いのあるパルチン・サイトに関する情報を提供しておらず、今年1月以降要請している同施設へのアクセスについてもIAEAの立ち入りが拒否されたままだと指摘している。


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