安定ヨウ素剤高い効果 JAEA 被ばく低減の分析報告

日本原子力研究開発機構(JAEA)は、原子力事故発生時における避難、屋内退避、安定ヨウ素剤服用など、防護措置を講じた際の被ばく低減効果の分析結果を取りまとめ、11月30日の原子力規制委員会の専門家会合に報告した。確率論的安全評価手法を用い、110万kWのプラントで248通りの気象条件を想定し事故影響評価を行ったもので、今後、原子力立地地域に要請される地域防災計画策定の参考となりそうだ。

被ばく低減効果は、対象範囲や実施期間などにより異なるが、今回の解析では、「OSCAAR」モデルを用い、屋内退避2日間、避難7日間、安定ヨウ素剤服用を放出開始の12時間前とし評価を行った。評価結果によると、線量低減は、屋内退避(自宅)で0.4倍程度、コンクリート屋内退避で0.2倍程度が見込めるものの、単独に実施しても、IAEAの安全基準を上回ることもあるとしている。一方で、施設から約10〜30km圏内では屋内退避、同約5〜10km圏内では屋内退避と段階的避難が、両範囲ともに、これらに加えて安定ヨウ素剤の事前摂取も組み合わせることで、高い被ばく低減効果が得られるとしており、複合的な防護対策の有効性を述べている。施設から約5km圏内では、大規模放出前の予防的避難で、高い被ばく低減効果が期待できるとしている。

評価の取りまとめに当たった本間俊充・原子力機構安全研究センター長は、「TMI事故では本当に避難しなければいけない住民が避難できなかった」などと、本研究に取り組んだ背景を述べながら、事故進展や対策導入のタイミングに応じ、個々の措置を適切な範囲で組み合わせることで効果的な被ばく低減効果が得られると説明している。


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