資源輸出国で集中講義 (1)モンゴル 国際原子力人材育成大学連合

原子力の教育・研究に携わっている日本全国の原子力関係の15大学(=表)が、産業界等の関係協力機関の支援のもとに、それぞれの人材育成資源を持ち寄りかつ連携し、質の高い国際原子力人材を育成するための文科省補助事業(大学連合ATOM)が平成22年より開始されている。

この代表的事業の1つとして、東南アジアをはじめとする原子力発電所新規導入計画を有する7か国(=表)を対象とした原子力の人材育成のための、原子力平和利用、原子力安全ならびに原子力基礎教育のための特別集中講義が実施されてきた。平成24年度には、これまでに、モンゴル及びインドネシアにおいて実施された。

モンゴルでは、首都ウランバートルにあるモンゴル国立大学において、原子力に関して平成24年9月10日から5日間の講義が行われた。受講生は45名で、モンゴル国立大学以外にもモンゴル科学技術大学や、原子力庁、科学アカデミーの若手からなり、全体の半数近くが女性であった。講義に先立って、モンゴル側からこの国における原子力への取り組みの説明があり、「福島の影響は少なからずあるが、現在は、原子力発電導入を議論中で、人材育成に専念している。将来の原子力導入に備え日本からの技術支援を期待する」との発言があった。

今回は、幹事校の東京工業大学を中心に北海道大学を併せ7人の教授陣により、日本の原子力発電所の現状と展望、原子炉物理、原子炉の炉心燃料、原子炉熱流動、原子炉安全、福島原子力発電所事故からの教訓、核燃料サイクルと原子力廃棄物管理などの講義が行われた。モンゴル国立大学では、基礎教育がしっかりされており、受講生の理解度は十分に高いことが討論からも伺えた。各講義の後に設けた設問へのグループ討論と回答発表では、受講生たちの活発な議論の場面が多く見られた。講義後の受講生に対するアンケート結果からは、「是非上級コースの講義を再度お願いしたい」との声があり、殆どの学生が日本の原子力に関心を持ち、日本への留学を希望する学生も多かった。

モンゴルは近年、経済成長が著しい。首都は、高層ビルの建設ラッシュで、ほとんど1日中道路は車で溢れ、渋滞している。この10年間でGDPは3倍になり、豊富な地下資源開発が進むにつれてエネルギーの消費も拡大の一途をたどっている。このため発電設備容量も2020年には2010年の1GWの2.4倍に増強する必要があると言われる。

モンゴルの原子力発電導入はこの電力需要の急増対策と自前のウラン資源の活用にその狙いがある。モンゴル国立大学は、これらの経済成長をけん引する諸分野に人材を供給していて、原子力においても関連学部を新設して人材育成に力を入れている。(次号に続く)


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