2012年回顧 いかなる体制下にあっても長期的・現実的な議論を

本年も年内最終号をお届けすることとなった。読者の皆様方には、弊紙へのご支援に対し感謝申し上げ、引き続きのご愛読、そして忌憚ないご意見等をいただければ何よりだ。

とはいえ、本年は、11月16日に衆議院の解散と相成り、政局を中心に、例年になく慌しい年の瀬となりそうだ。本号がお手元に届く頃には、総選挙を経て、新たな首班のもと、次期政権が始動しつつあるところかもしれない。東日本大震災・福島原子力事故後、初の国政選挙となった今回衆院選では、エネルギー・原子力発電の方向性が焦点の1つとなっており、われわれ原子力産業界としても、今後の関連する政策の行方に目が離せない状況だ。

これまでになく多くの政党が政権獲得を目指す中、震災から1年と9か月を経た今もなお、多くの人々が避難先から帰宅できず、コミュニティが分断され、不便な生活を強いられている状況下、「復興」を重要政策に掲げない党は存在しないだろう。国会といえば、今夏、PRイベントとして、「復興から未来へ」をテーマに12年ぶりに「こども国会」が開かれ、全国から集まった150名の豆議員たちが、国内外に対し、「きずなを大切に」とのメッセージを発信した。こうした未来を担う世代の前向きな意識こそ、わが国に今、求められているものであろう。

さて、昨年12月に福島第一原子力発電所の事故収束が政府により宣言されたものの、約1年を経過して、依然と、除染対策、損害賠償、事故炉の廃止措置など、多くの課題が山積している。来年も引き続き、「福島の再生なくして原子力の将来はない」を念頭に、原子力の安全性向上、失墜した信頼の回復、社会の持続的発展に向け、原子力産業界挙げて、地道に取り組んでいかねばならない。

振り返れば、今年は、エネルギー政策の方向性が集中的に議論された重要な1年であった。政府のエネルギー・環境会議は9月、「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするようあらゆる政策資源を投入」を骨子とした「革新的エネルギー・環境戦略」を決定した。エネルギー安定供給が国民の安全と産業経済活動の発展に不可欠で、国家の根幹を支える基盤であることを考えれば、ここで「原子力」という選択肢を手放すことは、将来国民への過大な経済的負担や、先進国として、わが国の国際社会に対する責務といった点からも、あまりに課題が大きい。

さらに、エネルギー戦略の議論に付随して、核燃料サイクルの政策選択肢に関しても、原子力委員会の技術検討会で評価が行われ、直接処分も代表シナリオの中に現れたが、コスト評価の一方、エネルギー資源獲得競争の激化など、将来的に道筋の見えない課題も指摘されており、エネルギー確保の観点から、これも再検討の余地がありそうだ。また、使用済み燃料が、そのまま廃棄物になる可能性が仮定されると、中間貯蔵施設の立地地域との信頼関係を損うばかりでなく、外交・安全保障への悪影響、技術と人材の喪失など、不可逆的なマイナス効果を及ぼすおそれもある。今年秋に予定されていた六ヶ所再処理工場のしゅん工時期は、トラブル対策で、来年10月に延期となったが、是非とも安定的操業を確立させ、プルサーマルについても計画的に推進し、わが国における核燃料サイクルを確立するよう努めていかねばならない。

原子力政策を巡っては、福島原子力事故以前から、顕在化している放射性廃棄物の最終処分問題の他、高速炉、核融合といった革新的な原子力エネルギー技術、国民生活の水準向上に大きな貢献をしている放射線利用技術、次代を担う人材の育成、技術の継承、国際社会における原子力安全、核セキュリティ、核不拡散の確保・充実等々、諸課題のあるところ、本来、これらに向けた施策のあり方を定めるべき「原子力政策大綱」の改定審議は10月に中断となった。政府主導の下、年内にも具体化像が示されつつある原子力委員会の見直し、電力システム改革などとともに、新政権下または、どのような原子力行政体制下にあっても、関連学協会等の助言・支援も仰ぎながら、これらの課題についても、グローバルかつ長期的視点に立った現実的な議論が進展することを期待したい。

また、電力需給では、5月、北海道電力泊3号機の定期検査入りに伴い、国内50基の原子力発電がすべて停止するという事態となり、夏の需要ピークへの対応が危ぶまれたが、首相含め関係4大臣による「安全性」と「必要性」の判断を踏まえ、立地地域の理解を得て、7月に関西電力大飯3、4号機が再稼働し、乗り切ることができた。

福島原子力発電所事故に関する調査報告が、7月までに政府、国会ともに出そろった。原子力の安全確保策については、二度と重大事故を起こしてはならないとの固い決意のもと、各発電所で、緊急安全対策が実施され、加えて、さらなる安全性・信頼性向上のための中長期的対策も、自主的かつ継続的に進められている。9月には、これまでの規制行政を一新した「原子力規制委員会」が発足した。今後は、国民の信頼回復、現場の状況を踏まえた実効的な規制、優秀な人材育成機能を備え、世界最高水準の規制確立を期待したい。


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