〈英国の原子力政策〉

原子力政策については2008年1月にビジネス・企業・規制改革省(BERR=当時の原子力担当省庁。同10月にエネルギー・気候変動省(DECC)が発足した)が原子力政策白書を発表し、(1)新規原子力発電所は他の低炭素電源と同様に英国の将来のエネルギー・ミックスの中で重要な役割を果たす(2)事業者に新規原子力への投資オプションを認めることは公益にかなう(3)政府は新規原子力プロジェクトの実施に向けて積極的に枠組み整備を進める――等が示された。現キャメロン政権(保守党と自由民主党の連立政権)も2010年6月、再生可能エネルギーやCCSと並び、原子力を英国の将来に不可欠な技術の1つと位置づけ、事業者に新規原子力プロジェクトの推進を促した。ただし、原子力発電プロジェクトも他の大規模プロジェクトと同様の認可手続きを踏むこと、原子力発電への補助金は拠出しないこととされた。

その一方で政府は昨年11月29日、電力市場改革(EMR)などを盛り込んだ新しいエネルギー法案を発表。マーケットを活用することで、電力価格の高騰を抑えつつ低炭素電源開発を促進する方針を明らかにした(原産新聞平成24年12月6日号参照)。国内電力市場に長期の固定価格買取制度(CfDs)を導入し、そのための市場支援として2020/21会計年度までに76億ポンド規模の補助金を投入する計画だ。2012/13会計年度の低炭素電源への補助金は23億5000ポンドであり、8年で3倍に引き上げる計算になる。洋上風力だけでなく、新規原子力発電所やCCS技術なども対象となる。

これは新規原子力発電所建設に向けた直接の補助金ではないが、投資家が抱く新規原子力発電所の収益性への不安を解消するという意味で、大きな政府支援だと言えるだろう。

具体的には、政府所有の電力買取事業者(counter party)を設立。電力市場価格と行使価格(Strike Price)との差額を、発電事業者と買取事業者の間で清算する方式のCfDsを導入する。市場価格が行使価格を下回った場合、発電事業者は差額を補填される。逆に市場価格が行使価格を上回った場合、発電事業者は上回った分を払い戻す。これにより大幅な電力価格の高騰を抑えつつ、発電事業者にとっても、将来的な投資の確実性を担保することが出来る。

加えて英政府は昨年12月6日、英国内原子力サプライチェーンの再構築を目指したアクション・プランを発表(原産新聞平成24年12月13日号参照)。国内プロジェクトのためにサプライチェーンを構築するだけでなく、長期的には英国を供給基地として海外プロジェクトへも積極的に参画していきたい考えだ。


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