〈新規原子力発電所の建設へ向けた主な手続〉

英国では大規模インフラ・プロジェクトには、これまで数十年単位の時間がかかるのが常だった。英国で最後に建設されたサイズウェルB原子力発電所のケースでは、許認可申請(1973年)から営業運転の開始(1995年)まで22年間、平均して年間150人もの規制当局スタッフを同発電所の許認可手続きだけに浪費した。

こうした反省から、新規原子力発電所が運転を開始するまでの手続きを、(1)原子炉設計の認証(2)サイトや運転者を特定した上でのサイト許認可――の2つに分け、並行して進めることでリードタイムを短縮させ、新規原子力発電所への投資促進をねらっている。

戦略的サイト評価(SSA)

新設に適するサイトを決定するための手続きで、2025年までに建設する原子力発電所のサイトとして戦略的に適切かを評価するのが狙い。公開諮問を経て、政府は選定基準書に従って候補地の評価を行い、新設サイトとして戦略的に適当と判断された8サイトについては2011年6月に発表した「国家政策声明(NPS)」に盛り込んだ。8サイトはいずれも既存原子力発電所が運転中か、かつて運転していたサイトの近郊。NPSには政府が評価済みかつ戦略的に適切なサイトのリストが掲載されていることから、事業者らは、このリストにあるサイトを利用した新設計画をインフラ策定委員会(IPC)に申請する。IPCは迅速(1年が目安とされている)に新規建設計画を審査・承認することになっている。

IPCは国内インフラの整備計画を所管する独立機関で、鉄道、港湾、空港、発電所など、大規模インフラ・プロジェクトのリードタイム短縮を目指して2009年10月に設立された。IPCは手続きを適正化し、プロジェクトを合理的に進行させることを至上命題としているが、原子力発電所建設プロジェクトについては、審査が若干遅れている。

包括的設計審査(GDA)

GDAは新規建設に向けた事前設計認可で、原子力規制庁(ONR)と環境庁が実施。2007年6月までに(1)カナダ原子力公社(AECL)のACR1000(120万kW)(2)仏アレバ社のUKEPR(160万kW)(3)米GE日立ニュークリア・エナジー社(GEH)のESBWR(155万kW)(4)米ウェスチングハウス社のAP1000(110万kW)――の4炉型が申請された。その後2008年4月にAECLが申請を撤回、同9月にはGEHが評価作業の凍結を申し入れ。最終的に審査の俎上に上がったのはUKEPRとAP1000の2炉型。

UKEPRについては昨年12月13日に審査を完了し、新規建設炉型の1つとして承認された。

フィンランドのオルキルオト3号機の建設遅延のケースを見れば明らかな通り、新設計炉の建設にあたっては、着工前に安全に係るすべての設計認証を完了することで、建設スケジュールの遅延や大幅なコスト超過を回避することが出来るだろう。

サイト許可(NSL)

NSLは原子力規制庁(ONR)が実施している。原子力事業者は所有サイトに関し、用途(発電プラント、研究炉、燃料加工施設、再処理施設、放射性廃棄物貯蔵所等)を明らかにした上で、ONRに設計、建設から廃止措置にいたるまでの事業計画全体を承認されなければならない。サイトの適正のほかに、申請事業者の組織体制や安全管理能力なども問われる。

昨年11月26日、EDFエナジー社のヒンクリーポイントC原子力発電所プロジェクトについてサイト許可が発給されたが、これは英国では原子力発電所建設サイトへの許可としては25年ぶりである。


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