国会論戦 エネ環境戦略見直し 安倍首相 責任ある政策めざす

第2次安倍内閣が誕生して最初の通常国会。国会召集日の1月28日の首相所信表明演説では、経済再生、震災復興、外交・安全保障に焦点を絞ったため、その後の各党代表質問では、エネルギー政策や今後の原子力政策について質問が数多く出された。主なものをまとめて詳報する。

【1月30日衆院本会議】

海江田万里氏(民主党代表) 総理が所信表明で触れなかったエネルギー政策について質問する。民主党政権は、2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入することを革新的エネルギー・環境戦略で決めた。これに対し、安倍内閣のエネルギー政策は、後退の一語に尽きる。

原発の位置づけも曖昧で、選挙時の自民党の公約は、エネルギーのベストミックスを10年間で確立すると、先延ばしを決め込んだ。総理は、原発の新増設を認める考えも示している。安倍内閣として、革新的エネルギー・環境戦略を今後も維持するつもりはあるのか。

安倍首相 できる限り原発依存度を低減させていくという方向に向けて、省エネルギー、再生可能エネルギーの最大限の導入、火力発電等の効率化、石油、天然ガス等の資源確保等について、予算の重点配分や、関連する規制・制度改革を最大限進めていく。

前政権が掲げた2030年代に原発稼働ゼロを可能とするという方針は、具体的な根拠を伴わないものだ。これまで国のエネルギー政策に対して協力をしてきた原発立地自治体、国際社会や産業界、ひいては国民に対して、不安や不信を与えた。

このため、前政権のエネルギー・環境戦略についてはゼロベースで見直し、エネルギーの安定供給、エネルギーコスト低減の観点も含め、責任あるエネルギー政策を構築していく。

【1月31日衆院本会議】

井上義久氏(公明党幹事長) 公明党は、東京電力福島第一原発事故を直視し、たび重なる党内議論を経て、原子力に依存しない社会をめざすことを決定した。自公連立政権合意では「可能な限り原発依存度を減らす」と明記され、原発依存度の低減は、この内閣が取り組むべき大きなテーマの1つだ。その意味でも、再生可能エネルギーの普及拡大に思い切った投資を行うべきだ。

渡辺喜美氏(みんなの党代表) 電力や医療等の規制改革に取り組む総理の姿勢を伺う。

まず、電力の自由化について。発送電分離を徹底し、電力小売の新規参入を促進する環境を整備し、これにスマートグリッド等の技術を組み合わせれば、分散型の電力供給体制の新しい事業の創出につながるとともに、原発ゼロを実現することが可能になる。

原発事故から2年近くが過ぎたいま、政府の務めは、汚染によって自分の家や土地から引き離された無辜(むこ)の市民に対して、最優先でその資産価値を保障することではないか。みんなの党は、汚染地域の資産を借り上げ、買い上げて、自然エネルギーの生産拠点や除染の実験施設等として活用する法案を国会に提出した。

帰れない地域の方々に、除染を待って帰るか、移転をして新しい生活を始めるか、選択できる経済的条件を保障する仕組みを直ちにつくる考えはあるか。

安倍首相 電力自由化については、電力供給構造のあり方および小売全面自由化の工程等について検討を進め、安定供給を大前提としつつ、具体化を図っていく。その際、分散型電源の活用、再生可能エネルギー関連の新たな事業の創出のみならず、低廉で安定的な電力供給の確保や消費者の電力選択の幅を広げる観点から、電力自由化にしっかりと取り組んでいく。

原子力を含むエネルギー政策については、まず、いかなる事態においても国民生活や経済活動に支障がないよう、エネルギー需給の安定に万全を期すことが大前提だ。

この点、30年代に原発稼働ゼロを可能とするという前政権の方針はゼロベースで見直し、エネルギーの安定供給、エネルギーコスト低減の観点も含め、責任あるエネルギー政策を構築していく。その際、できる限り原発依存度を低減させて行く方針で検討していく。

志位和夫氏(共産党委員長) 原発問題について、安倍内閣は再稼働を推進し、新増設を容認するなど、あからさまな原発推進を進めようとしている。しかし、少なくとも過半の国民は、原発に依存しない社会の実現を望んでいるということが、国民的議論の結果を分析した政府の認識ではないのか。

総理は、自民党政権に交代したから、原発に対する国民的議論のこの到達点が変わったとでも言うのか。原発推進政策は、過半の国民の意思に背くものだと考えないか。

2006年12月に、共産党の吉井英勝議員が質問主意書で、巨大地震の発生に伴う全電源喪失によって冷却機能を失った場合の検討を行っているのかとただしたのに対して、政府は答弁書で、指摘のような事態が生じないように安全の確保に万全を期していると答弁したのは、安倍総理だった。

総理にいま求められているのは、こうした安全神話を振りまき、大事故を引き起こしたことへの深刻な反省であり、国民、とりわけ福島県民への謝罪ではないか。

共産党は、即時原発ゼロと再生可能エネルギーへの抜本的転換の政治的決断を強く求める。

安倍首相 前政権が原発に関して昨年夏に実施した、いわゆる国民的議論の結果については、大きな方向性として、少なくとも過半の国民は原発に依存しない社会の実現を望んでいるとされていると同時に、一方で、その実現に向けたスピード感に関しては意見が分かれているとも分析されている。

前政権のエネルギー・環境戦略についてはゼロベースで見直し、エネルギーの安定供給、エネルギーコスト低減の観点も含め、責任あるエネルギー政策を構築していく。

福島第一原発事故によって、被災者の皆さんをはじめとする国民の皆さんに多大な苦労をかけていることに対して、心からお詫びする。

かつ、原発の安全性について、複合災害という視点が欠如していたことや、規制組織の独立性が十分ではなく、いわゆる安全神話に陥ってしまった点、政府として深く反省しなければならない。妥協することなく、たゆまぬ安全性、信頼性の向上を目指していく、安全規制、安全文化をつくっていく、そのために全力を上げていく所存だ。

鈴木克昌氏(生活の党衆院幹事長) 私たち生活の党は、エネルギー政策の大転換で、10年後を目途としてすべての原発を廃止することを主張している。代替エネルギー対策の分野に、大胆な公共投資を行うべきだと考える。

安倍首相 いかなる事態においても国民生活や経済活動に支障がないよう、エネルギー需給の安定に万全を期していくことが重要だ。そのために、できる限り原発依存度を低減させていくという方向に向けて、省エネルギー、再生可能エネルギーの最大限の導入、火力発電等の効率化、メタンハイドレートの開発を含む国内外の石油、天然ガス等の資源確保等について、予算を重点配分し、最大限取り組みを進めていく。


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