英セントリカ社が撤退 英国のヒンクリーポイント計画

英国大手のガス・電力供給会社であるセントリカ社は4日、同国で数十年ぶりの原子力新設計画としてEDFエナジー社が進めているヒンクリーポイントC原発計画から撤退する意向を表明した。同国では現在、低炭素電源による電力を固定価格で「差金決済」する制度を盛り込んだ電力市場改革法案が国会審議中。ヒンクリー計画で政府が保証する最低価格も政府とEDF社が交渉中であることから、「プロジェクト全体のコストと建設日程が不明確で、巨額の投資を行う株主への利益還元期限が長期化する」として撤退を決断したもの。EDF社は今後、複数メディアが報じていた中国広東核電集団有限公司(CGNPC)との交渉を含め、セントリカ社に代わって20%出資するパートナーを模索していくと見られている。

仏電力(EDF)は2009年、英国内で8サイトの既存原子力発電所を保有していたブリティッシュ・エナジー(BE)社を買収した。セントリカ・グループはその際、EDFからBE社株の20%を購入。同グループは同時に、ヒンクリーポイントCおよびサイズウェルCとして合計4基の原子炉を建設・操業するためにEDFエナジー社が設立したNNBジェネレーション社の株式20%を購入するオプションも取得していた。

しかし、新設計画の開始前経費がEDF社と合意していた上限である10億ポンドに到達。同社は福島事故後の同計画を詳細に査定した結果、初期投資額が大きく膨らむとともに建設日程も数年延びると判断したため、NNB株購入オプションを行使しない方針を決めたとしている。これに伴い、同社は過剰資本を株主に還元するため、5億ポンドの自社株買いプログラムを1年かけて実行するが、保有するBE社株20%はそのまま温存。今後も既存原子炉に関するEDF社との連携は継続していくことになる。

ネックは電力買取価格

英国政府が進めている電力市場改革の目玉は、電気料金を上げずに低炭素電源プロジェクトにおける投資家の利益を安定させることを狙った「差金決済取引(CfDs)」を伴う固定価格(行使価格)による電力買取制度の導入。市場価格が行使価格を下回った場合、発電事業者は差額を補填される一方、市場価格が行使価格を上回れば事業者はその差額を払い戻すことになる。

このため、EDF社は地元誌の取材に対し、「新しいパートナーを惹き付けられるとしたら、それは政府が原子力の発電電力に適切な行使価格を保証した場合に限る」と回答。行使価格が決まらなければ、潜在的な投資家との如何なる契約も成立し得ないとの見解を明らかにした。一方、政府の見方は楽観的で、「日立がホライズン社を買収したように、英国の新しい原子力市場は十分魅力的であり、代わりの投資者はほどなく見つかるだろう」と述べた模様。

英国の新設計画では、ホライズン社の売却時と同様、CGNPCなど中国企業が参入に強い関心を示していると伝えられており、EDF社と交渉すると見られている。


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