原子力に全く言及せず オバマ米大統領の一般教書演説

米国のB.オバマ大統領は12日、連邦議会に対する一般教書演説を行い、2期目を迎えた同政権の主要な政治課題について説明した(=写真)。

エネルギー政策については、風力、太陽光などの再生可能エネルギーのほかに、「シェールガス革命」と呼ばれるほどの生産量拡大により輸出国に転じることも予想される天然ガスへの期待が明確に示される一方、原子力には一言の言及もなかった点が原子力産業界を落胆させている。原子力はこれまで、オバマ政権が推奨するクリーン・エネルギーの一角としてその推進を約束されていたが、COの排出量削減に貢献すると言われる非在来型ガスの台頭で、その比重が低下しつつあることが示唆される結果と言えそうだ。

大統領はまず、「米国産のエネルギーほど投資見通しの明るい分野は他にない」と指摘。国内で石油や再生可能エネルギーの生産量が伸びただけでなく、天然ガス生産量もかつてないレベルで増加したことから国民の光熱費も低下しており、米国民の将来のエネルギーを自らコントロール出来る体制がようやく整ったと表現した。

こうした状況を背景に同大統領は、「子供達と未来のために我々は気候変動問題に一層真剣に取り組まねばならない」と強調。同大統領が政権1期目で遭遇した巨大ストームや干ばつ、山火事などの発生をただの偶然と信じるか、抗い難い科学の裁定と見るかは自由だが、(地球規模の気候変動により)手遅れとなる前に議会と内閣が超党派で協力し、一層持続可能なエネルギー源へ移行するなどの行動を取るべきだと呼びかけた。

この目標に向けた具体的な実績として、同大統領は昨年に国内で新設した発電設備容量の半分が風力発電であったことや、太陽光発電が年々コスト安傾向にある点に言及。天然ガス・ブームによってクリーン・エネルギーへの移行とエネルギー自給の度合いが高まっていると説明した。

また、国内で原油とガスの生産量を増やすため、オバマ政権は認可手続きの簡素化と加速を促すと明言。その歳入で「エネルギー保障信用基金」を潤し、非ガソリン車技術の研究開発を促進していくと提案している。

大統領のこのような方針を裏支えするデータは、米エネルギー省(DOE)・情報局が昨年12月に公表した、同国のエネルギー市場に関する2040年までの長期予測「年次エネルギー見通し2013年版」にも示されている。

同報告書は米国内のエネルギー生産量の伸びが消費量の伸びを上回るとする一方、原子力に関しては「2011年に19%だった発電シェアが40年には17%に減少する」と予測。再生可能エネルギーの利用増加やエネルギー輸入の減少などと相まって、温室効果ガスの排出量が劇的に削減されるとの見通しを示した。

主な所見としては、(1)今後10年間にシェール・オイルなど非在来型を中心に原油生産量が急激に増加(2)米国は前年版の予測よりも規模の大きい天然ガス輸出国になる(3)再生可能エネルギーの発電量が化石燃料より早い速度で増加する(4)エネルギー使用の効率性改善や高炭素燃料からのシフトにより、米国の温室効果ガス排出量は2040年までを通じて05年より5%以上低いレベルを維持する――などを提示。

原子力については、11年に7900億kWhだった発電量が40年に14%増の9030億kWhになる一方、発電シェアは低下する。設備容量も25年には1億1400万kWに増加するが、その後は閉鎖炉が増加し、40年の容量は微減。1億1300万kWになるとの見方を示している。


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