福島の教訓を組織内に 原産協会が安全シンポ開催

原産協会は26日、東京・千代田区の一橋講堂で、「原子力安全シンポジウム」(=写真)を開催し、原子力関係者ら約400名が参加した。福島第一原子力発電所事故を受けた我が国の原子力安全向上に向けた取り組みについて、国内外の原子力規制に関わる専門家や原子力技術者、マスメディアなど幅広い立場から議論を行った。

開会に当たって挨拶した今井敬原産協会会長は、「事故の発生以降、我が国の原子力関係者は、『福島の復興なくして日本の原子力の将来は無い』との強い決意のもとに、国と協調・連携しながら取り組んできた」と振り返り、引き続き、発電所周辺環境の除染、放射性廃棄物の中間貯蔵、被災地域の復旧・復興、並びに発電所の廃止措置といった山積する課題の解決に向けて、全力を傾注していかねばならないとの決意を語った。

その中でも、炉心の大部分が溶融した原子炉の廃止措置は、「世界に前例のないものであり、極めて困難かつ長期を要する作業だ」と指摘し、廃炉事業を安全にまた効率的に進めるためには、「廃炉技術に関する国際研究開発センターを設置するなど、世界の叡智を結集した新たな取り組みが必要」と強調した。

一方、国民生活や産業経済活動の基盤を支えるエネルギー安定供給の重要性を強調し、「原子力産業界としては、国益の観点から、今後も原子力がエネルギーミックスの中核的な役割を担っていくことが必要だ」との考えを表明した。

続いて基調講演として、吉川弘之・科学技術振興機構研究開発戦略センター長が「技術者の社会的責任」、J.ラークソネン・フィンランド放射線・原子力安全庁元長官が「原子力リスク低減に繋げる社会的・制度的マネージメント」と題して講演した。

吉川氏は、「『技術者の社会的責任』の説明を求められると、なかなか難しい問題だ」と指摘し、「技術者・専門家は固有の知識を持ち、知っているがゆえに、社会に対して責任を持つことになる」と解説し、現代社会の科学技術への依存度が極度に大きくなっている状況の中で、「その人たちの多くが組織に属し、組織に対する忠誠心が求められる」と指摘する一方、「公的助言を行う場合は、組織に対する忠誠を捨て、自らの専門に対して責任を負うべきだ」と主張、総合科学技術会議の中に若手数十人からなる公的シンクタンクの設立を政府に提案していることを明らかにした。

福島原発事故の教訓として、「非常時に迫られた対応を忘れずに、社会や組織の中にその知識を埋め込んで行かなければならない。組織の記憶として残して行かなければならない」と強調した。(2面に関連記事)


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