グローバルな視点に立って 安全シンポ 規制、事業者交え議論

一面所報、原子力安全シンポジウムで、午後からのパネルディスカッションでは、ラークソネン氏の他、米国原子力エネルギー協会副理事長のA.ピエトランジェロ氏、山本哲也・原子力規制庁審議官、岡本孝司・東京大学教授、滝順一・日本経済新聞論説委員、富岡義博・電気事業連合会原子力部長が登壇し議論した。

議長を務めた国際エネルギー機関元事務局長の田中伸男氏は冒頭、今後のエネルギー安全保障のあり方にも言及した上で、福島原子力発電所事故後の日本の規制に「世界が注目」などと述べ、グローバルな視点から議論が展開されるよう期待した。

ピエトランジェロ氏はまず、日本で大震災があった11年に米国でも原子力発電所周辺で竜巻、洪水、大地震が発生したが、いずれもプラントの安全は確保されたとして、「国内の原子炉は強固」であると述べた。一方で、福島原子力事故後の産業界、規制側の動きに触れ、公衆安全、環境保護、経済安定の共通項として、「炉心溶融を防ぐこと」を一致した目標に掲げ行動する必要から、柔軟性を備えた安全対策「FLEX」につながったことを紹介し、議論に先鞭を付けた。

規制委員会がこのほど示した新安全基準骨子案に関して、富岡氏は、「多重化」と「多様化」を視点に、電源確保、冷却確保、浸水対策など、安全性向上に向け事業者が既に先行し取り組んでいる事例を紹介した上で、シビアアクシデント対策で要求される可搬式設備に関しては、恒設設備との組み合わせで最適な安全基準となる必要を求めた。

これに対し、岡本氏は、ストレステスト審査に係った経験も踏まえ、原子力安全は総合的リスクを低減することにあるとした上で、ハードウェア対策以前に、マネジメント能力の維持・向上を訴えた。

また、ピエトランジェロ氏は、米国プラントのサイト・炉型の多様性に触れ、一度にすべてを完了するのではなく、優先順位を付けて対策をとっていく必要を述べたほか、長期的にプラントが停止する影響にも留意すべきとした。

規制者と事業者とのコミュニケーションに関しては、透明性の確保を重要視し、被規制側との会談についてウェッブサイトで公開していることを山本氏が述べたのに対し、滝氏は、国民の信頼回復のため、規制委員たちが立地地域に直接出向いて説明する必要も訴えた。

ラークソネン氏は、ディスカッションを振り返り、緊急時の意思決定のあり方について、今後、議論することを提案した。

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終了後の記者会見で、ラークソネン氏は、新安全基準について、「代替策でも安全目的を達成できるなら認めることにしてはどうか」などと対策に柔軟性を持たせるべきことを示唆した。

また、ピエトランジェロ氏は、「ピアレビューで今すぐやるもの、リソースがもっと必要なもの、さらなる検討が必要なものにレベル分けをして、対策に取り組んでいる間も運転は行っていた」と米国の例を示し、田中氏も、「基準を満たすことが再稼働の条件になってしまっているが、エネルギー安全保障への影響を考えると、どこかで政治判断の時がくるのではないか」と先行きを予測した。


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