DOEサイトでも建設検討 GEH社のレーザー濃縮(分子法)工場計画

GE日立ニュークリア(GEH)社傘下のグローバル・レーザー・エンリッチメント(GLE)社が、米ケンタッキー州パデューカにある米エネルギー省(DOE)のサイトでも、サイレックス法レーザー濃縮工場の建設を正式検討し始めたことが2月22日に明らかになった。米露の核兵器解体から出る高濃縮ウランを低濃縮ウランに希釈して米国の原子炉に供給する協定が今年後半に終了予定であるなど、世界の原子力発電所では今後20年間で大量の低濃縮ウランが必要になると同社は予測。本拠地であるノースカロライナ州ウィルミントンでの商業用濃縮工場建設に加えて、パデューカ・サイトにおける米国濃縮会社(USEC)の設備リース契約終了後に、同濃縮インフラを活用したレーザー濃縮工場の建設を視野に入れていく考えだ。

サイレックス法は六フッ化ウランを励起する分子レーザー法で、GLE社は2006年に豪州のサイレックス・システムズ社から同技術を商業化・運用する独占実施権を取得。U235を8%まで濃縮可能で最大年間生産量6000トンSWUの商業用濃縮工場をウィルミントンで建設するため、09年に申請書を米原子力規制委員会(NRC)に提出しており、昨年9月には第3世代レーザー濃縮技術による施設に対しては初となる建設・運転認可(仮決定)を取得した。

同認可は審査期間を経て今年1月に最終決定したが、GLE社はこれとは別に昨年11月、パデューカで追加の濃縮工場を建設する可能性について予備評価する方針を表明していた。同サイトでは、USECが操業するガス拡散法ウラン濃縮工場が今年前半にも閉鎖予定であるため、同工場を所有するDOEが同サイトと設備の再利用をGLEに正式要請。その後の協議を受けてGLE社は先月21日、サイレックス法を採用した濃縮工場に関する拘束力のない建設提案を含めた「関心表明書(EOI)」をDOEに提出したもの。

サイレックス社の現会計年度(2012年7月〜13年6月)上半期の業務報告によると、パデューカの既存設備を活用すれば、サイレックス法濃縮工場を建設する際の期間とコストを大幅に縮減することが可能になる。また今回の提案では、DOEが保有する劣化ウランの在庫約11万5000トンの処理が潜在的に含まれており、これを再濃縮した場合の金銭的価値は約30億ドルにのぼる見通しだ。

GLE社は現在、ウィルミントンにある試験ループ施設とテネシー州クリントンにある機器製造支援施設の運転を継続中。年内を通じて、サイレックス技術の総寿命データや操業信頼性等に関する実績を蓄積するほか、さらなる試験を実施して初の商業規模施設の設計エンジニアリングに役立てることになる。

同技術の商業化は(1)試験ループと設計エンジニアリングの完了(2)商業用モジュール初号機の建設(3)フル・スケール商業施設の建設――の3段階方式で取り組む段取り。暫定的な顧客の確保など、関連する諸活動を懸案した上で、GLE社はフル・スケールの商業用濃縮施設を、まずウィルミントンに建設するか否かの判断を下すとしている。


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