シリーズ 英国Q&A (1)英国の原子力部門

英国の原子力の状況は?

現在、16基の原子力発電所が運転中で、総発電電力量の約18%を供給しています。いずれも比較的古く、15基は2023年までに閉鎖される見込みです。

運転中の16基の内訳は、改良型ガス冷却炉(AGR)がツイン・ユニット(2基構成)で7サイトに立地しているほか、加圧水型炉(PWR)が1基。マグノックス炉も1基で、14年9月に閉鎖される予定です。マグノックス炉を除く発電所はすべてEDFエナジー社が所有/運転しており、同社は英国最大の発電事業者です。

ウラン転換/濃縮/再処理/燃料製造/廃棄物処理をすべて国内で実施しています。

新しい原子力発電所建設に関する英国政府の方針は?

政府は国内での原子力発電所新規建設を支援しており、準備を進めています。11年7月に発表された『原子力発電に関する国家政策声明』では、「(英国の)電力供給を脱炭素化し、エネルギー・セキュリティと電源多様化を強化する緊急の必要性に鑑み、政府は遅くとも25年末までに新規原子力発電所を運開させる必要がある」と指摘しています。

そして英国政府は、国内での原子力新設のために、一連の改革を実施・検討しています。

まず3年間の戦略的サイト評価(SSA)を実施しました。SSAの結果を受け、議会は原子力新設に適した8サイトを承認しました。

また12年11月には改正エネルギー法案を議会へ提出しました。同法案は「安定した無理のない低炭素エネルギーを確保するための制度的枠組みを構築する」メカニズムを盛り込んでおり、電力市場改革や原子力規制庁(ONR)の組織改編など、原子力部門にとって適切な条項が明記されています。

原子力発電に関わる主な政府機関は?

エネルギー・気候変動省(DECC)は、安定したクリーンで無理のないエネルギー供給と、気候変動の低減に向けた国際的取り組みの促進を目的とした行政機関で、傘下に原子力廃止措置機関(NDA)や放射性廃棄物管理委員会(CORWM)など8機関を擁しています。

保健安全執行部(HSE)は労働関係の保健・安全を担当する独立した規制機関です。ONRは現在はHSEの傘下にありますが、改正エネルギー法案はONRを新たに独立した規制機関とし、英国の原子力部門全体を担当させることにしています。

環境庁(EA)は、原子力サイトからの環境影響や放射性廃棄物処分を担当しています。EAとONRは、新規建設に向けた包括的設計審査(GDA)やサイト許可(NSL)の発給に関し、協力しています。

英国で新規建設しようとしている会社は?

ホライズン・ニュークリア・パワー社、NNBジェネレーション社、ニュージェネレーション社の3社が、原子炉新設に向けて準備をしています。

ホライズン社は日立製作所が親会社で、オールドベリーとウィルファの2サイトを保有しています。現在ABWRのGDAプロセスを開始しています。

NNB社はEDFエナジー・ニュークリア・ジェネレーション社と、英国のセントリカ社(※2月4日に撤退を表明)の合弁会社です。同社は、ヒンクリーポイントとサイズウェルの2サイトにそれぞれEPRを2基ずつ建設する計画で、それぞれ18〜19年、20〜22年に運開するとしています。

ニュージェネレーション社はイベルドローラ社とGDFスエズ社の合弁会社で、ムアサイド・サイトを保有し、最大360万kWの設備容量を建設する計画です。採用炉型はAP1000またはEPRです。

英国で日本原子力産業協会のような業界団体は?

英国の民生部門の原子力産業界を代表する団体として英原子力産業協会(NIA)があり、260社を超える企業が加入しています。NIAは会員企業の国内外でのビジネスを支援することで、産業界全体の業績を伸ばすことを目標としています。

原子炉の新設に向けNIAは、英国原子力サプライチェーンの将来性に関するレポートなどを発表しています。

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回答者 ジョージ・ボロヴァス(ピルズベリー・ウィンスロップ・ショー・ピットマン外国法事務弁護士事務所 パートナー)、ヘレン・クック(同 シニア・アソシエイツ)

構成 石井敬之

(本Q&Aは一般的な情報提供を目的としたものであり、同事務所の法的意見や法律面での助言として提供しているものではありません)


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