閉鎖発議に州政府が対案 スイスのミューレベルク原発

スイスのベルン州政府は6日、州内で稼働するミューレベルク原子力発電所(KKM)(BWR、39万kW)が反対派州民のイニシアチブにより、直ちに閉鎖するよう要求されていたのに対し、「可能な限り速やかに、ただし2022年までに閉鎖する」とし、閉鎖日程は事業者との協議で決めるとの対案を提示した。5月末までの予定でパブコメに付している。同州政府はKKMを操業するBKW社の大株主でもあることから、強制的な閉鎖に伴う損害賠償金の負担など、莫大な財政リスクを考慮して取った措置だと説明。同案が州議会で承認されれば、KKMは連邦政府が2011年の脱原子力政策で定めた運転期限の2022年まで稼働できる可能性が高まると見られている。

スイスの連邦参事会(内閣)は福島事故後、国内の既存炉5基が約50年の運転寿命を終え次第、2034年までに段階的に閉鎖していく方針を決定。1972年に運開したKKMは最短でも22年までの稼働が約束されていた。

しかし、同原発の「炉心シュラウドにヒビがある」と主張する地元の反対派住民の提訴を受け、連邦行政裁判所(FAC)は昨年3月、無期限の運転期間延長が09年に認められていたKKMを、最大でも13年6月末に閉鎖すると裁定。BKW社はこれに控訴しているが、その後の判断は下されていない。

また、昨年2月には反対派州民が「ミューレベルクを送電網からはずせ」と銘打ったイニシアチブを州政府に提出し、KKMの即時閉鎖を要求した。べルン州政府による今回の対案はこの件に関するもので、「強制的に即時閉鎖すればBKW社のその他の株主から数億スイス・フラン規模の賠償を求められる可能性がある」としたほか、秩序立てた脱原子力を進めようとしている連邦政府のエネルギー政策とも矛盾すると指摘。対案の最終目的を同イニシアチブと同様、「可能な限り速やかな閉鎖」とする一方、運転期限を遅くとも22年までと特定した上で、閉鎖日程をBKW社との協議で決めていくとの考えを示したもの。

同日、BKW社はこの提案を了承。州政府はパブコメを5月末に終えた後、8月半ばまでに同案の最終版を州議会に提出する計画だ。


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