安全目標は時間かけて検討を 近藤原子力委員長

近藤駿介・原子力委員長(当時は東京大学院工学系研究科教授)は14日、原子力規制委員会が10年を経て安全目標の議論を再開することについて、考えを述べた。同氏は2003年12月当時、旧原子力安全委員会の安全目標専門部会で「安全目標に関する調査審議状況の中間とりまとめ」を部会長として取りまとめた。

近藤委員長は、10年前に検討した時を振り返り、「いろいろな思いをこめて作ってあるので、今日正しく整理整頓するべきだと思っている」と述べ、79年のスリーマイル島(TMI)事故直後、米国でも安全目標が必要だという勧告があったが、実際に米国原子力規制委員会(NRC)が決めたのは約10年後であったことを示し、時間をかけて検討すべきとした。

また、「国の安全に関わることなので、原子力だけの問題ではなく、本来は国会で決めるべきという議論もある」とする一方、「数量的な目標は判断するのにあった方が便利。しかしその目標に関しては、何でも機械的にやればいいというものでもなく、相場観が社会と共有されていないとあまり意味がない。関係者だけで決めるというのはよくない」と述べた。

現実的には、基準に関してIAEA等の他国の数字を使っている状況で「国内に基準がないのが不思議」とし、議論のプロセスの中で様々な事柄が一種の強制力を持ってくることになるとした。

検討にあたっては、「地震リスクの評価など外部事象の評価が当時弱かった。結局は複数の専門家の意見をどうハザードカーブにまとめるかが一番難しい」と解説した。

日本の規制委員会での議論については「最初の段階でどのように議論をするかというルールを決めるべき。議論が対立した場合、ルールがきちんとしていればお互いが楽」ともした。

最近問題になっている原子力発電所の敷地内の近傍断層影響評価でも、「敷地直下に断層があるかどうかというが、断層も本来、影響範囲は無限にあるわけではない」と指摘し、ルールベースで物事を決めていくべきだと強調した。


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