避難先のケアや食事影響 高齢者死亡リスク 南相馬老人施設で調査

渋谷健司・東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学分野教授らは27日、上昌広・東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門特任教授ら、福島県南相馬市立総合病院と共同で、福島第一原子力発電所の23キロ圏に位置する南相馬市内の5つの老人介護施設の協力のもと、事故後の避難による高齢者死亡リスクの推定と避難プロセスにおける死亡率上昇要因の分析結果について発表した。

福島第一原子力発電所事故で南相馬市内の老人介護施設から県外に避難した高齢者の死亡率は避難前に比べ2.7倍に増加。ただし避難後の死亡率の変化は施設によってばらつきがあり、長距離移動による身体的負担以上に避難前の栄養管理や避難先の施設のケアや食事介護の不徹底などが影響したとしている。また初回の避難者のほうが、2回目以降の避難者よりも死亡リスクが高いことも示された。

調査は南相馬市の5つの老人介護施設に入所していた715人について、震災前の過去5年間と震災後の避難期間を含む約1年間の高齢者死亡率を、数理モデルを使った回帰分析および各施設長や介護士へのインタビューの2つの手法で行われた。

今回の成果により、事故直後の避難は必ずしも最善の選択ではなかった可能性もあるとしており、今後の災害時に備えて避難のリスクについても検討の必要があることを示唆した。まず住み慣れた環境に留まることを優先し状況を見極めた上で、避難が必要と判断した場合は身体的負担の軽減と食事介護を中心とした避難先のケアの充実が不可欠だとしている。


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