シリーズ 英国Q&A (2)英国の新設プロジェクト

英国の原子力発電所新設プロジェクトの状況は?

日本の皆さんがよくご存知のホライズン社以外のプロジェクトについてお話します。

NNB社は、ヒンクリーポイントとサイズウェルの2サイトでのプロジェクトを計画しています。

中でもヒンクリーポイントC計画は昨年、新規建設に必要な数多くの許認可をすでに取得しています。英国原子力規制庁(ONR)はサイト許可(NSL)を発給しましたし、採用炉型であるEPRに対してもONRと環境庁(EA)が包括的設計審査(GDA)を完了しています。

インフラ策定委員会(IPC)の機能を移管された計画審査庁も、今年の1月に同計画の承認を勧告し、コミュニティ・地方自治省が近く結論を出す見込みです。

現在EDFエナジー社は、英国政府が昨年議会へ提出した「改正エネルギー法案」で提案されたメカニズムについて、英国政府と協議を重ねているところです。同メカニズムは原子力のような低炭素技術を用いた新規のエネルギー関連プロジェクトに対し、早期の投資決断を促す内容のもので、EDFエナジー社は、協議の結果次第でヒンクリーポイントC計画を実施するかどうかの最終判断を下すとしています。

もうひとつのサイズウェルC計画について同社は昨年9月、地元自治体に対し、同計画の地域への影響についての評価文書案を提出しました。それによると同計画は、建設期間には5600人分、運転期間には900人分、建設から廃炉に至るまでサイト内だけで2万5000人分の雇用を発生させるとしています。地元自治体からのコメントを受け、最終的な評価文書を発表する予定です。

一方ニュージェネレーション社は、ムアサイド・サイトに最大360万kWの原子力発電設備容量を建設する計画です。計画はまだ検討段階で、今後サイト特性調査、炉型選定(EPRまたはAP1000を検討中)、プロジェクトへの関係機関の同意、NSLの取得を経て、最終的な実施判断を下すことになります。

最終判断は2015年以降になると見られています。

包括的設計審査とは?

GDAは原子炉設計に関する事前認証手続きで、ONRとEAが実施します。GDAの中で、原子炉設計の安全性、セキュリティ、環境影響が審査されます。

ONRはGDAを4ステップで実施し、各ステップ完了時に審査状況を公開します。EAは予備評価/詳細評価/協議の3プロセスを実施します。GDAが完了し承認されれば、ONRが設計承認確認書を、EAが設計承認文書を発給します。

GDA自体に法的拘束力はありませんが、疑義を呈する新たな知見がない限り、規制当局はGDA完了後10年間、GDAでの検討内容を尊重することになっています。

07年には(1)EPR(2)AP1000(3)ESBWR(高経済性・単純化BWR)(4)ACR1000――の4炉型について、GDAが着手されました。EPRがGDAを完了した最初の炉型です。審査費用は申請者が負担するため、AP1000とESBWRは、申請者の申し出により審査が保留、ACR1000は申請が撤回されました。

なおホライズン社がウィルファとオールドベリーの2サイトで採用するABWRについて、エネルギー・気候変動大臣は、ONRとEAにGDA実施に向けた協議を開始するよう命じました。

サイト許可とは?

英国はNSLというワンステップの許認可プロセスを実施しています(GDAはオプション的な事前認可プロセス)。65年原子力施設法では、特定のサイトでの原子力施設の建設と運転に先立ち、NSLを取得することを規定しています。

NSLはONRが発給する法的文書で、原子力発電所の設計から廃炉まで36項目を審査します。ONRの指示/承認/指定/同意/通告/同意などさまざまな規制事項があるため、NSLはGDAと同時並行して実施されることになるでしょう。

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回答者 ジョージ・ボロヴァス(ピルズベリー・ウィンスロップ・ショー・ピットマン外国法事務弁護士事務所 パートナー) ヘレン・クック(同シニア・アソシエイツ)

(構成 石井敬之)

(本Q&Aは一般的な情報提供を目的としたもので、ピルズベリー・ウィンスロップ・ショー・ピットマン外国法事務弁護士事務所の法的意見や法律面での助言として提供しているものではありません)


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