内部被ばく「低く抑制されている」 東大が福島県内の3万人調査 事故後の体内セシウム量を測定 食品検査など奏功

東京大学の研究グループが福島県民3万人を調査したところ、県内で日常生活から慢性的に摂取する放射性セシウムの量は非常に低く抑えられていることがわかった。事故後の食品検査やスクリーニングが有効に働いていることが示された格好だ。

この調査は、東京大学理学系研究科の早野龍五教授らの研究グループが10日までにまとめたもので、原子力事故から7〜20か月後の福島県民約3万人の体内セシウム(Cs)量を測定し、チェルノブイリ事故で得られた知見に基づく予想よりも内部被ばくは「遥かに低い」などとしている。

また、今回調査では、県中地域の三春町内小中学生全員の調査から、検出限界を超えた児童生徒が皆無だったことから、「サンプリングバイアス」(対象選定の偏り)がないことも裏付けられている。

福島県が11年6月から実施し結果を公表している内部被ばく検査では、12年末に受診した10万6096人のうち、預託実効線量(体内から受けると思われる内部被ばくについて、成人で50年間、子どもで70歳までの累積線量)が1mSvを超えたのは26人だが、検査結果で大多数が該当する「1mSv未満」内の分布状況が不明であるほか、「安全そうな人ばかり測っている」といった「サンプリングバイアス」の問題についても早野教授らの研究グループは指摘していた。

こうした問題点や、チェルノブイリ事故を踏まえた先行的研究も踏まえながら、同研究グループは、11年10月〜12年11月、福島県平田村内の病院に設置されたホールボディカウンターを用いて、計3万2811人の内部被ばく調査を実施した。今回の検査における放射性セシウムの検出限界は、Cs134、Cs137ともに全身で300ベクレルで、調査の結果、12年春頃までは初期被ばくの影響がみられたものの、これ以降の放射性セシウム検出率は低く、特に子どもについては同年5月以降の検出率が0.0%、全体でも1%程度となっている。

これらの調査結果から、研究グループは、福島県公表データで、「1mSv未満」に該当する集団は、範囲内に均等分布しているのではなく、「大多数は不検出」と結論付けている。調査結果から、早野研究グループは、現在の福島県内の日常生活で、食品からの慢性的な放射性セシウム摂取は非常に低く抑えられており、原子力災害発生後の食品検査、スクリーニングが有効に働いているなどと評価した。


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