リーダーシップ維持を 核不拡散など 日本の役割に期待

提言はまず、日本が、原子力政策の決定に関わらず取り組まねばならない課題として、(1)福島事故の影響を受けた国民の幸福(2)迅速な廃炉と除染(3)日本のプルトニウム備蓄に関する信頼できる戦略(4)福島事故から得た教訓の全世界への普及―の4点を指摘した。

そのうち(2)迅速な廃炉と除染については「福島地域の除染と福島第一発電所の廃炉は、これらの活動が世界各地で将来廃炉に取り組む方法に影響を与えることを認識した上で、地域社会と国際社会の協力を得てできる限り迅速に遂行されなければならない」とし、(4)福島事故から得た教訓の全世界への普及でも「原子力分野の世界的リーダーとして、日本、米国、国際原子力機関、及びその他の世界機関は、福島事故からの結論を日本国民、国際社会、特に原子力発電を検討もしくは使用している国々に広く普及させることが肝要」とし国際的な視点での取り組みを求めている。

次に日本が原子力政策を進める場合に国際間にまたがる広範な戦略的懸念を6点あげた。(1)日本の国際的先進国としての役割(2)核不拡散の世界的なリーダーシップ(3)日本の新しい原子力安全規制(4)気候問題(5)世界経済及び技術先進国としての日本の役割(6)地域安全保障の基軸としての日本―。

とくに(1)については「原子力の未来に関する日本の決定は広範かつ重大に国際的な影響がある」とし、日本の政策変更は国際的な影響への責任を伴うことを指摘した。(2)の核不拡散の世界的なリーダーシップについても、日本がその地位を明け渡すことで、核拡散や核テロなどから「より安全な世界の実現に貢献してきた日本と米国の影響力が低下する」懸念を明記した。さらに世界的にも注目される(3)の新たな安全規制について「最も効果的な規制アプローチは、固有のリスクを認めながら、このリスクの定量化と管理を通じて社会を保護するという、リスク情報を活用することだ」とし、最高水準の安全を目指すためピアレビュー・プロセスの活用を推奨した。

こうした問題認識と課題への対応にあたり、提言は日米が共同して取組むことが有益な事項を7項目あげた。(1)トモダチ・エネルギー・コミュニティ同盟(2)廃炉・除染に関する共同作業(3)使用済み燃料と廃棄物貯蔵に関する世界的リーダーシップ(4)日米の技術的優位性を維持する(5)核物質防護条約の2005年修正案の批准(6)透明性と国際社会の厳しい監視を通じた信頼の醸成(7)日米共同エネルギー安全保障―。

このなかで、(2)廃炉・除染に関する共同作業については「福島の有効かつ透明な廃炉・除染のために有意義な国際的連携を可能にする」ことを提言、放射能汚染からの回復に関する米国の長期にわたる経験、及び日米両国の政府と原子力産業界の間の唯一無二のレベルの信頼と相互運用性を考慮すれば、「米国は日本の廃炉・除染の専門知識を補足する上で特別な役割を有する」とした。

また(3)使用済み燃料と廃棄物貯蔵に関する世界的リーダーシップについて「日本、米国、韓国、及びその他の地域国と、使用済み燃料及び核廃棄物管理の共通の課題に対する共同解決策を目指して、対話を開始する」こと、また使用済み燃料と廃棄物管理の前進にむけ実現のための国際連携を推奨した。

(6)の透明性と国際社会の厳しい監視を通じた信頼の醸成については「信頼しうる、また有効な日本の規制制度にむけ継続的に取り組むうえで、米国はじめ海外の専門家との積極的で透明性のある連携を奨励。規制・被規制者間の国際的なピアレビュー・システムを創設する」とし、国際連携で透明性ある規制制度へ継続的改善をはかることを提言した。


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