「孤立せずに独立性を」 規制体制で海外専門家が助言

日本では新たな規制基準の策定作業が続けられているが、4月に開催された原産年次大会では安全性向上に関するセッションに内外の専門家が登壇。このうち2名はセッション後に国内メディアの会見に応じ、国際的見地から福島や規制体制など、日本の状況に対する見解を示した。

D.フローリー国際原子力機関(IAEA)事務次長(原子力安全・セキュリティー局長)
◇福島第一原発ではセキュリティ上、どのような対策や課題が必要か?

福一を廃炉するにはまだ知られていない新しい技術の開発が必要なため、東電は非常に大きな課題に直面している。汚染水の管理には包括的な取り組みが必要だし、汚染物質を取り除くことの利点とネガティブ要因のバランスを取れるよう、全てのステップを熟考した後に実行しなければならないが、国際社会やIAEAには支援の準備が出来ている。

核セキュリティについては、核物質防護条約の修正案を2005年に採択しており、発効すれば核物質の盗難や、汚染させるという脅迫等への検討が義務付けられるなど、国際的な核セキュリティに関する体制はさらに強化される。発効までにはあと33加盟国の批准が必要だ。

◇多くの報告書が福一の事象の原因を津波だとしているが、IAEAは地震という要因をどう考えるか?

津波が来る前に地震の影響があったかどうかの明確な答えはない。我々は日本政府の要請で、震源に最も近い女川にミッションを送ったが、施設に関して特に重大な損壊は見ていない。福島でも津波が来て一定のレベルまではサイトは保護されていたと思うが、反応は機器の位置の違い等で異なるので、一概に福島でもそうだとは言えない。

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20年以上にわたって仏原子力安全庁(ASN)の長官を務めたA-C.ラコスト氏は、日本の新しい原子力規制委員会(NRA)への助言について次のように説明した。

◇日本のNRAによる新しい基準が厳しすぎるという声をどう見るか?またNRAのアドバイザーとして、どのような助言をしたのか?

技術的な内容を細々、というより全体の枠組に関する助言を仰せつかっている。産業界との関係を築く上では、孤立することなくNRAが独立性を保つことが重要だ。

ASNは新たな定款で独立性を謳う前に政府から独立した立場にあり、事業者であるEDFに権限を授けたり制約したり制裁を課すといったことを行ってきた。互いに尊敬し合うチームだが信頼にそぐわぬ行為が発生すれば、与えた権限を撤回できる権限も有している。

NRAにどういった助言ができるかという分野の1つには検査があり、派遣したチームが検査の具体例を示すなど、カウンターパート同士の相互訪問も実施している。

◇NRAの新基準では敷地外にかなりの放射線が出ることが前提になっており、「事故を防止し、発生後の影響を緩和、長期的な敷地外汚染を回避するよう設計、建設、運転する必要がある」とした原子力安全条約締約国・特別会合の結論と食い違うのではないか?

その結論は政治的声明であり、内容の詳細についてはより掘り下げていく必要がある。「長期的汚染」という文言以外に「大きな汚染」の回避という文言がよく引用されるように、今後、実質的に何が可能なのか技術的に詰め、具体的な数値についても議論を深める。長期的かつ大幅な敷地外汚染を回避する改善を既存の原子炉に適用し、新しいものについても可能な限り盛り込むということも言外に含まれている。


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