賠償責任額引き上げへ カナダの原子力賠償法

カナダ連邦政府のJ.オリバー天然資源相は10日、商業炉や研究炉、燃料加工工場等の原子力関連施設で事故が起きた際の賠償責任限度額を10億カナダドル(約923億円)に引き上げると発表した。現行の原賠法発効後、約40年が経過し、近年の国際基準にそぐわなくなってきたことから、同国における損害賠償体制を強化し、国のエネルギー構成における重要要素である原子力の産業界を維持していく措置だと説明。国際原子力機関(IAEA)の「原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)」にも加盟する考えで、政府は今秋にもこれらに関する法案を議会に提出するとしている。

この方針はカナダ原子力安全委員会の年次大会の席で発表されたもの。主な改良点は、3年間の時間枠の中で事業者が支払う賠償責任額の上限を現在の7500万加ドル(約70億円)から10億加ドルに引き上げること。これに加えて賠償金の請求対象分野を拡大するとともに、賠償金の支払い手続きも改善する。また、賠償請求を行える期間を現行の10年間から30年間に延長した。

一方、事業者に対する「責任集中」と「無過失責任」の原則という現行法の長所は維持。すなわち、機器供給業者や下請け企業等が賠償責任を問われることはなく、被害者も損害を請求するために過失を立証する必要はない。

また、CSCへの加盟により、CSCの全加盟国が拠出した補完基金の中から最高4億5000万加ドルが追加で提供される計算。これによりカナダでの潜在的な賠償責任額は14億5000万加ドルまで引き上げられる見通しだ。

カナダ原子力協会(CNA)は今回の発表について、「歓迎しているし、これまでも上限引き上げの試みを一貫して支持してきた」とコメント。産業界は過去に原賠法に基づく請求が1件もなかったことを誇りとしており、安全性や稼働実績をたゆまず改善してきたことの表れと述べている。


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