米規制委が燃料プールへの地震影響調査 「大地震でも冷却性能は無事」

米原子力規制委員会(NRC)は24日、マークT型格納容器を有する米国内のBWRの使用済み燃料貯蔵プールで設計基準を超える地震が発生した場合の影響調査報告書案を公表し、30日間のパブコメに付した。結論として「深刻な地震によりプールからの放射能放出に到る確率は1000万年に1回」とするなど、周辺住民に被害が及ぶ可能性は低いとした。一般からのコメントを盛り込んだ最終報告書を作成した後、福島事故の教訓を採り入れた活動の一環として使用済み燃料貯蔵プールに関する広範な規制判断上の分析に役立てる方針だ。

同報告書案はまず、福島事故では使用済み燃料貯蔵プールとプール中の燃料集合体は無事だったとした上で、米国内では使用済み燃料の安全な貯蔵方法や、燃料をプールから乾式貯蔵キャスクに早急に移送するようNRCが要求すべきかなどの課題が浮上したと指摘。このためNRCの原子力規制研究局は、米国内で福島と類似のプールを有する原子力発電所、およびマークT型格納容器を有するBWR23基について、使用済み燃料貯蔵プールの設計基準や福島事故時のものを数倍上回る強力な地震、および仮想事故によるリスクと影響の調査を実施した。

同調査ではまた、プール内に使用済み燃料が満杯の場合と、集合体の間に隙間ができるほど数が少ない場合を比較。プールで冷却水喪失を引き起こすような地震など、起こりにくい事象発生時の冷却水補充といった緊急時手続きについても検証を行っている。

結果としてNRCの報告書案は、「非常に強力な地震であっても冷却水が失われるほどプールが損傷する確率は低い」と指摘。地震によりプールから放射能が放出される可能性は1000万年に1回、もしくはそれ以下のオーダーとしており、たとえ特定のプールが損傷を受けた場合でも全体として使用済み燃料は安全に冷却されると保証した。燃料の損傷につながるケースにおいても、「既存の緊急時手続きにより周辺住民の安全は保持される」と断言。そうした手段としては広大な潜在的汚染区域からの住民退避などが含まれるとした。

NRCはまた、5年以上冷却された古い使用済み燃料をすべて、5年以内に貯蔵キャスクに移す潜在的メリットについても調査。早めに移送したからといって実質的な安全上のメリットが得られるわけではないと結論づけている。


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