米政府監査院 米原子力規制委の認可更新審査を調査

米国政府監査院(GAO)は10日、米原子力規制委員会(NRC)が原子力発電所の運転認可更新申請書を審査する際のプロセスに関する調査報告書を公表し、「概ね手順通りだが、環境審査ガイダンスの改定が時宜に適っていない」と結論付けたことを明らかにした。NRCの報道官はこれに対し、GAOがこの報告書をとりまとめた今年5月以降に審査規則とガイダンスの改訂版を公表したと反論している模様。

GAOは連邦議会の要請に基づき、政府機関の財務検査や政策プログラムの評価を通じて予算の執行状況を監査する機関。原子力規制機関として独立の立場が保障されているNRCについても、議会は例外なくその活動を監視している。

米国では近年、多くの商業炉で運開当初の40年の運転認可が満了しつつある。それらの運転を継続するため、認可を20年延長する際にNRCが実施する安全性と潜在的な環境影響に関する審査について、福島事故後の米国民の目も厳しくなっていることを考慮し、GAOは次の点に関するプロセス評価を議会から要請されたとしている。

すなわち、(1)認可更新プロセスの範囲(2)NRCによる安全・環境影響審査ガイダンス改定の範囲(3)文書化された認可更新手続きのNRCによる遵守状況(4)更新手続きの長所と短所に関する有識関係者の見解と改善提案――だ。NRC審査の適性や手続きの質などに関する評価は行っていない。

[安全審査と環境審査]

報告書によると、NRCは安全審査ガイダンスを05年と10年に2回改定したほか、その間の期間に特定の安全課題について暫定改定。一方、環境審査の規制とガイダンスについては96年の最初の発令以来、ほとんど改定していない。NRC規制はその目標として、環境課題に関する調査結果を10年毎に見直すことを謳っており、必要であれば認可更新規制とガイダンスを改定すると明記しているにもかかわらず、NRCが改定プロセスを開始したのは2003年のこと。昨年12月にNRCの委員達は新たな規制の案文を承認したものの、スタッフには追加の変更作業を指示したため、今年3月になってもスタッフはそれらの作業にかかりきりだった。

NRC当局者によると、改定作業に時間がかかる理由として人的資源が限られていることや評価を必要とする技術的課題が異常に多いことなどがある。NRCは認可更新プロセスの中で重要かつ新しい環境情報を考慮するよう申請者に要求、スタッフには要請する。これに対して、17年前に初めて発布された規制とガイダンスを使用することは、NRCがあたかも古い情報を使用しているかの印象を与え、どのようなガイダンスが申請書の評価に使われるのかという不信感を申請者に生じさせることになるだろう。

[GAOの結論]

GAOが審査した8件の認可更新申請で、NRCは概ね手順に従って安全性と環境の課題を審査。安全審査では、更新プロセスの範囲の中で申請者が特定した機器のほかに、提案を受けた埋設済み配管とタンクの検査、および劣化管理のための火災防護プログラムについて、ほぼ手順通りに審査作業を行っていた。

GAOがインタビューした有識者の話では、認可更新プロセスにおける長所と短所に加えて潜在的な改善の余地も特定されている。強みとしてNRCスタッフの技術的知識や徹底した審査ぶりが挙げられた一方、短所として審査範囲が狭すぎる点、公聴会の手順の不備により公衆の有意義な参加が妨げられているなどの点が指摘された。結果として何人かの有識者は、認可更新プロセスにおいてこれらへの改善を提案するに至っている。


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