英政府、新設サイトに財政優遇措置提案 運開後、容量に応じて40年間

英国のエネルギー気候変動省(DECC)は17日、新規の原子炉建設サイトに特定されているイングランドとウェールズ両地域の八地点の地方自治体に対し、原子炉運開後に設備容量0.1万kWに付き年間1000ポンドまで支払うなど、受け入れサイトに対する40年間の財政優遇一括措置を提案した。キャメロン政権は原子力の新設プロジェクトを前政権から引き継いだ際、公的補助金なしで実行することを条件としていたが、風力やシェールガス開発への補助と同様の方策で既存の原子力設備リプレースを一層加速していく考えだ。

DECCによると今回の提案は、国家的な発電事業の中でこれらの自治体が新規原子炉から影響を受ける期間や規模は、その役割から得られる利益の保障で評価されるべきとの認識に基づく。事業税の中から融通される資金の使途は特定の自治体毎に調整することとし、地元への長期的な恩恵と原子炉建設による社会経済的資産が保障されるよう自治体が管理。イングランド南西部サマセット州のヒンクリーポイントで提案されている2基の場合、最高1億2800万ポンドが地元に提供されることになる。

具体的な方法としては今年4月1日に導入された政府の事業税保持計画を活用。新設原子炉を受け入れた自治体は原子炉の運開後最初の10年間は自らが徴収する事業税の50%をそのまま保持できる。2030年以降の30年間は第2段階として、DECCが徴収する事業税の中から原発の規模と運転寿命に応じて年間1000ポンド/0.1万kWを地元に提供。30年までに第2段階に移行できない場合は、DECCが地元自治体との広範な協議と並行して措置の実行に関する詳細をサイト毎に決定する。

ただし、事業税の保持措置はイングランド地方の受け入れサイトにのみ適用。ウェールズ地方はスコットランドや北アイルランドとともに連合王国内で大幅な自治権を有しているため、DECCは北ウェールズに立地するウィルファ原発サイトにもイングランドのサイトと同等の優遇一括措置が適用されるよう、ウェールズ地方政府と協議するとしている。

原子炉新設計画の潜在的経済効果

DECCのM.ファロン・エネルギー担当閣外相は、新設原発は相当数の雇用を生み出すとともに原子力供給チェーンへの投資を促進するなど、英国のエネルギー戦略と政府の成長戦略において中心的役割を果たすと明言。また、受け入れ自治体の貢献を正しく評価することはこの上もなく重要なことだと断言した。

DECCは、今後20年間に世界で新規原子炉の建設に9300億ポンド、閉鎖炉の廃止措置に2500億ポンドの投資が行われるほか、英国内の新設計画だけでもピーク時に関連部門で4万人分の雇用が創出されると予想。今年3月に政府が産業界と共同作成した原子力産業戦略では、そうした機会を開拓していく官民の長期的なパートナーシップの基盤が築かれたと強調している。


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