米EIAが2040年までのエネ予測 「原子力の発電量、倍増」

米エネルギー省(DOE)内にある独立の統計分析機関のエネルギー情報局(EIA)は7月25日、2040年までの長期的な世界のエネルギー市場動向を予測した「国際エネルギー見通し(IEO)2013」を発表した。今後30年間に世界のエネルギー需要は途上国に牽引され56%の増加が見込まれるほか、電源別発電量では再生可能エネルギーと原子力の消費量の伸びが化石燃料を上回る見通しだ。

IEO2013の標準予測ケースによると、世界のエネルギー消費量は2010年実績の524クアッド(=1000兆)Btu(英国熱量単位)から40年に820クアッドBtuに増加する。主に中国とインドの消費量増が大きな要因で、これら2か国だけで40年までの増加分の半分を占める計算になる。

発電量も10年の20兆2000億kWhが40年には93%増の39兆kWhに拡大。電力市場が十分確立され消費パターンが落ち着いたOECD諸国では、現時点で多くの人々が電力にアクセスできない状況にある非OECD諸国より電力需要の伸びが小さい。非OECD諸国のネット発電電力量が40年までに年平均3.1%で上昇するのに対し、OECD諸国のそれは1.1%に留まることになる。

また、エネルギー供給保証と温室効果ガスによる環境破壊への懸念から、多くの国で再生可能エネルギーの拡大支援政策を政府が加速。結果として、同エネルギーの成長速度は標準予測ケースの中で最も高い年率2.8%に達すると見込まれる。この後に続くのが天然ガスと原子力で、伸び率はともに年率2.5%。石炭火力も年平均で1.8%増加する見通しであるため、2040年までを通じて最大の発電シェアを維持するが、温室効果ガスの排出抑制を狙った将来的な国家政策や国際合意により、そのシェアは実質的に低下していくと予想される。

〈福島事故は世界の原子力開発に長期的に影響〉

原子力による世界の総発電量は10年実績で2兆6200億kWhだったが、40年には5兆4920億kWhまで倍加するとIEO2013では予測。再生可能エネルギーの拡大支援と同様の理由で原子力も設備の新設が促進されるものの、原子力の場合は(1)福島事故の影響(2)欧州のOECD諸国の既存政策における原子炉の閉鎖計画(3)アジアの非OECD諸国で続く強力な原子力拡大傾向――というファクターが背景にある。

全般的に福島事故は今後の世界の原子力開発に長期的に影響していく可能性がある。大規模な拡大政策を公表していた中国でさえ、規制当局が国内の安全審査を終えるまですべての新規計画の承認手続きを停止。ドイツとスイスはそれぞれ、2022年と34年までに原子力から撤退する計画を発表した。同事故により原子力開発の不確実要素が増大したのは事実だが、それでもIEO2013は、40年までに原子力発電設備が中国で1億4900万kW、インドで4700万kW、ロシアで3100万kW、韓国で2700万kW増加することを見込み、原子力が拡大していくとの予測を示している。


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