IAEA 導入課題の理解促進で 「メンタリングコース」を開催

「メンタリングコース」の正式名称は、「原子力発電の計画・開発の決定の支援に関する地域会合」。国際原子力機関(IAEA)の主催で、共催機関は原子力国際協力センター(JICC)と若狭湾エネルギー研究センター(WERC)。バングラデシュ、インドネシア、ヨルダン、マレーシア、フィリピン、タイ、べトナム、イエメンの8か国から女性2名を含む11名が参加した。

7月8日から19日まで日本で実施したもので、原子力発電関連機関の現場訪問を通して、途上国の計画準備補佐官たちに実務的な課題を理解してもらうのが目的。昨年7月に続き日本での開催は2回目となる。国際的人材育成に積極的な福井県やWERCの申し出を受け、昨年のIAEAとJICCの共催が、今回は3機関共催となった。

訪問先は、運転中・建設中の原発、炉関連メーカー、核燃料サイクル施設、研修機関、放射能監視機関、商工会議所、大学、研究機関、地元で原子力発電の基盤を支えている企業等。コース半ばの7月12日に、今回のコース開催を準備したIAEA原子力エネルギー部の八木雅浩上級原子力技師と、JICCの鳥羽晃夫センター長にインタビューした。

――このコースの略称「メンタリング」の意味は?また、それを通してどのようなコースにすることを意図されたのか。

鳥羽)「メンタリング」とは、特定の領域で知識、経験、スキル等をもつ人が、支援を必要とする人に対し、一定期間継続して互いに学びながら成果を挙げて行こうという概念です。これまでの研修コースでは、研修を受ける側の意欲、知識・経験のばらつきや異文化圏での滞在の戸惑いは、研修を与える側にはあまり考慮されていませんでした。それらはほとんど事務局の人等の周辺のボランティア的善意に委ねられていました。しかし研修生が研修に集中できる環境を考えたとき、疑問点のその場での対応や不便さの解消には、研修を伴走する人間がいればいいということから「メンタリングコース」の発想が生まれました。

移動中の車輛中での解説、毎日提出が求められるレポートに対する採点、また健康への注意等を「メンター」と呼ぶこの伴走者にはお願いしています。

コース自体の目的は、日本が経験してきた原子力開発に伴う試行錯誤、またあれだけ安全に自信をもっていた日本が福島事故を防げなかったことで得た教訓等を、実感してもらい、自国の進めようとしている原子力発電計画への反映に活かしてもらうことです。

そのためにも、昨年のコースで参加者から高い評価を頂いた被災当事者広野町への訪問のような他で得られない緊迫感を感じられる内容にすることを心掛けています。

――IAEA側ではこのコースの評価や改善をどう考えているか?

八木)日本の関係機関に多大なご協力を頂いていることに、まず心から御礼申し上げたい。このコースは、現場での直の説明とその実務担当者との質疑応答で原子力発電開発の個々の段階の具体的な問題を肌で感じてもらうことを重要視しています。IAEAの技術協力事業はややもすると座学中心の頭でっかちになりがちで、原子力先進国の生の経験を感じ取ることは困難でした。この点で現場訪問とそこでのディスカッション、経験豊富な日本人メンターのサポートは参加者にとってとても貴重な経験となると考えます。昨年も今回も、参加者が切実な関心をもっていることが分かる質問が相次ぎ、どの訪問先でも時間がタイトになっています。

反省というか、戸惑いとしては、今年もヨルダンのアラジ原子力副委員長のようなとても「研修生」とは言えないような高位者の応募があったことです。コースを高く評価していただいているということにはなりますが、参加者のレベルのバラツキは昨年同様に課題と考えております。

国際社会から見ると日本は依然として原子力先進国であり、その経験や知見の発信・共有という観点で日本の果たすべき役割は非常に大きいといえます。今回のメンタリングコースの主催などを始め、さらに多くの場においてリーダーシップを発揮していただくよう期待しています。(中杉秀夫記者


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