メープル炉の争議で和解 加原子力公社とノルディオン社

医療用放射性同位体(RI)の大手販売企業であるカナダのノルディオン社は20日、RI生産専用炉のメープル炉プロジェクトに関して5年に及んだカナダ原子力公社(AECL)との争議で両者が包括的な和解協定に合意したと発表した。

それによると、ノルディオン社はAECLから1500万加ドルを現金で受け取る一方、AECLは調停経費として同社に要求していた約4700万加ドルの請求権を放棄。RI生産施設協定に基づいて双方がお互いを相手取って起こしていた訴訟も取り下げる。また、両者間で結ばれていた既存のRI供給契約を修正し、AECLはノルディオン社へのRI供給を16年10月末まで、放射性廃棄物処分サービスを26年10月末まで継続することになった。

ノルディオン社は1996年の両者間の合意に基づき、熱出力1万kWのメープル炉2基をAECLのチョークリバー原子力研究所内に建設したが、技術的問題により試運転段階で開発が停滞。投資総額も2倍に増大したことから、ノルディオン社は06年に建設費用ごとメープル炉の所有権をAECLに引き渡した。両炉が生産するRIは08年に運開後、40年間ノルディオン社に供給されることになっていたが、AECLとカナダ政府は08年5月、ノルディオン社への事前連絡なしに同プロジェクトの中止を表明していた。

AECLはこれまで、チョークリバー研究所内にある国立研究ユニバーサル(NRU)炉で世界の医療用RI需要の3分の1を賄ってきたが、運開後50年以上が経過し、設備も劣化していることから16年に生産を終了する方針。今回の合意もこうした事情を反映する内容となった。

また、カナダ政府は医療用RI供給の途絶という課題の中・長期的解決に投資を行いつつ、短期的取組として安定供給の基礎を築ける多様化イニシアチブとなる原子炉を使わない生産技術の研究開発プログラム案を10年に募集。今年7月には、「RI技術促進プログラム(ITAP)」から700万加ドルを提供した医療用RI製造サイクロトロン施設がアルバータ州立大学に完成している。


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