「深層防護」の考え強調 原子力学会事故調 最終報告ドラフト公表

日本原子力学会の福島原子力発電所事故に関する調査委員会(委員長=田中知・東京大学教授、写真)は2日、最終報告書のドラフトを公表し、都内で説明会を開催して意見を求めるなどした。事故調査委員会は12年6月に、専門的視点から、事故に関する深い分析を行うことを目的として設置され、学会内の専門部会等が総合的に参画して、調査・検討を進めてきた。

説明会では、「原子力安全の基本的考え方」の検討を行ってきた専門委員が、「分析から得られる事故の真因」として、安全への認識不足を指摘し、「深層防護」の考え方を共有し徹底すべきとしたほか、過酷事故に対するリスク認識不足もあげ、リスク評価の仕組み構築が必要などとして、今後の既存プラントへの安全設計に向け、学会として基準策定、標準化に取り組んでいく考えを述べた。

学会では、事故発生直後から、環境修復に関して、積極的に議論してきたが、今回報告書は、サイト外の対応にも触れており、除染活動で、除去した土壌等の取扱いがネックになっているとしたほか、目標線量の見直しなど、住民の行動様式も踏まえ、考え方を切り替える時期にあると指摘している。

さらに、事故炉の廃止措置に関しても、準備作業、燃料デブリの取り出し・保管、放射性廃棄物の処理・処分など、実施上の課題と解決策・提案を示しており、今後も学会として、専門的知見を活かし、技術的検討を継続する体制を整えるべきとしている。

報告書ドラフトは、引き続き4日に、原子力学会が青森で開催した「秋の年会」の公開セッションでも説明が行われ、今後、海外からのレビューも踏まえ、ブラッシュアップを図り、最終版を取りまとめることとしている。


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