欧州の規制者団体が域内原発に勧告 圧力容器に欧州標準の審査

欧州の原子力規制者ネットワークである西欧原子力規制者協会(WENRA)は8月29日、圧力容器鍛造時に生じる欠陥の点検に当たり、欧州標準の安全審査を欧州のすべての原子炉に適用すべきだと勧告した。ベルギーの原子炉2基で圧力容器材料中の元素組成の偏りが毛状ヒビ発生の原因となったことから、圧力容器の製造会社に関係なく統一の取れた手法で審査することで、欧州域内の原発における材料物質の品質と構造上の健全性を確実に検証していく重要性を指摘している。

ベルギーでは昨年夏、ドール3号機とチアンジュ2号機(ともに100万kW級PWR)の超音波探傷検査で圧力容器母材に数千個の毛状ヒビの兆候を示す信号を検出。その後の徹底調査で鍛造時に材料中の水素が集まって発生した「白点」が原因であったことが判明した。ベルギー連邦原子力規制局(FANC)は両炉の状態について「永久閉鎖しなければならないようなものではない」とし、今年5月に運転再開を承認したが、製造業者のRDM社がすでに現存しない一方、同社製圧力容器を有する原子炉はこれら2基のほかに南北アメリカの11基を含めて20基にのぼっている。

WENRAは欧州連合(EU)加盟の原子力発電国およびスイスの原子力規制責任者で構成されることから、欧州のすべての原子炉でこの問題の適切な対策を取ることは重要かつ必要なことと認識。FANCから調査情報の公開と協力を得て、欧州で同一の基準に基づいた対策の実施を勧告するに至ったと説明した。

関係各国の規制当局はすでに、製造時の欠陥を検査する安全審査の実施を国内事業者に指示しているが、WENRAは(1)まず圧力容器製造時およびこれまでの検査記録を包括的に審査(2)その結果、その国の規制当局が必要と判断すれば非破壊検査技術(NDT)を用いた試験を実施――という2段階制の審査ガイダンスを勧告。ただし、審査の必要性や実施範囲、量的な特定、およびNDTの採用については、その圧力容器から得られる情報に基づいて各国当局の判断に委ねられるとした。

また、NDT試験の実施時期についても、通常の計画停止時期を提案。審査のために原子炉を特別に停止する必要は無いと強調している。


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