[インタビュー]戦略的で真剣な姿勢 中国の資源とエネ確保 自国資源切り札に 日中経済協会京事務所 渡辺遙氏

7%超の成長を続ける中国にあって、エネルギー確保は国家の重要課題だ。先日、日中経済の橋渡し役である日中経済協会の北京事務所に赴任中の渡辺氏が一時帰国の際に、同国のエネルギー確保の取り組みなど、最近の状況をうかがった。

「やっぱり大気汚染は厳しいですね。休日に買い物にいくときなど、汚染状況を確認して、ひどいときはPM2.5用のマスクをつけないと」と話す。大きな工場には環境対策もなされているが、「石炭を生炊きしている町工場があるし、車の渋滞も年柄年中」と苦笑する。降水量や地形の問題も北京の大気汚染悪化の要因になっている。

それは一面で、経済活動の旺盛さを物語ってもいる。実際、日中関係悪化がいわれるなかで、日本からの直接投資は3年つづけて年1兆円超の水準を維持しそうだ。「自動車産業は現地に生産拠点があり、勢いを取り戻しつつあります」というのが現地での肌感覚だ。

高い経済成長を支えるには、やはりエネルギー確保が非常に重要な課題。「再生可能エネルギーは2020年を目標に15%増やす計画だし、水力も揚水発電をやろうとしている」という。中国は世界一の包蔵水力があり、開発余地がある。

「原子力発電は福島第一原子力発電所事故の以降、慎重になっている面がありますが、当面2020年時点で5800万kWの設備容量を有し、同時点で工事量3000万kWを確保する計画です。石炭消費量、CO排出量が世界一であることをかなり気にしているので、再生可能エネルギーや原子力開発に必死なのがわかります」と、中国のエネルギー確保への真剣な姿勢を強調する。加えて、「一説に、中国はこの先2000年は石炭資源に困らないとも言われていますが、自国の資源は最後の切り札として残す、中国に限りませんが、エネルギー確保は国家戦略ですから」とも。長期的な視点で国家戦略として資源エネルギー問題に向き合う中国の姿。

対照的に、エネルギー政策が不透明なままの日本の状況−やはり気にかかる。「資源のない国ですから、今こそ真剣に考えることが必要ですよ」。化石燃料依存は環境面でも「このままというわけにいかないでしょう。今後ペナルティを課すなど日本に対して厳しい国際世論が出てくることも十分に考えられるのでは」と、先行きを案じる。


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