日本の安全文化等を調査 仏電力・査察部がミッション

福島事故発生後2年半が経過したが、現場では米原子力規制委員会(NRC)を始め、英仏の関連組織・企業の支援を受けながら汚染水処理も含めた処理作業が続けられている。その一方で、仏国などとともに日本企業も原子炉を海外輸出する道筋を模索しており、その際に問題となる原子力の安全思想や文化には諸外国から少なからぬ関心が寄せられている。

このような背景下における日本の原子力の実情を把握するため、フランス電力(EDF)の原子力安全総合査察部(IGSN)からJ.タンドネ総合査察官を団長とする5名のミッションが9日から13日までの日程で日本を訪問した。福島第一発電所のみならず高浜・伊方の両原発を視察したほか、事故後発足した原子力規制庁(NRA)、原子力安全推進協会(JANSI)などとも協議。最終日には原子力産業協会幹部と懇談する機会を設けている。

IGSNは原子力発電所の安全性と放射線防護について内部監査を行う組織の最上部に位置し、査定における独立性保持のために独自の方法を用いているほか、総合査察官のタンドネ氏も外部(海軍)から招聘。査察関連の情報を幅広く収集し、より良い判断を下すため、海外での許認可や安全性向上、内部査察についても積極的に調査を行っており、今回の日本訪問は2008年と09年に続いて3回目となる。

日本の原発を視察した印象として同ミッションは、原子炉が長期間停止することにより機器のメンテナンスはもとより運転スタッフの技術の維持、再訓練の面で課題が浮上してくる可能性があると指摘した。

「安全文化」については、IAEAの定義にもあるように経営や現場の各レベルでコミットメントも異なるものだとしており、発電所のハード面で万全を期さねばならないのは当然として、それをどのような人々が動かすのかが重要な点であり、信頼できる人材・組織が必要との認識。日本の安全文化の向上にはまだ時間がかかるかもしれないとの印象を受けたとしている。

一方、仏国の原子力情勢については、これまで支持派が優勢だった原子力に対する世論調査で反対派が増加していること、エネルギーの移行に関する国民的議論においても結論が出ず、新たなエネルギー法案の提出が来年にずれ込む見通しであることなどが伝えられた。


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