認知症診断の進展に成果 放医研がPETの画像化技術 治療薬の開発促進に期待

放射線医学総合研究所(放医研)は19日、世界で初めて脳内でのタウの蓄積をPETにより画像化することに成功し、タウの蓄積とアルツハイマー病の重症度の関連性を示唆する成果を得たことを発表した。アルツハイマー病以外の認知症でのタウの画像化においても有効であるとの成果を得たことで、多様な認知症についての発症メカニズムの解明や、症状からの診断が困難である発症初期の診断、重症度の客観的な診断、認知症治療薬の開発促進が期待されるという。

近年、認知症患者の増加が社会問題となっているが、発症原因は不明な点も多く、効果的な治療法は確立されていない。国内の全認知症患者の半数にのぼるとされるアルツハイマー病患者の脳内では、アミロイドベータ(Aβ)やタウの蓄積に伴い神経細胞が死ぬことで、物忘れなどの症状が発現していく。アルツハイマー病の確定診断は脳内において、これら異常タンパク質の蓄積を確認することが必要だが、これまでは患者の死後に脳切片を染色して顕微鏡で見ることで、確認できるものだった。その状況を変えたのがPETによる生体内でのAβの画像化技術だが、タウの画像化は未開発だった。

今回、放医研は、タウの蓄積を画像化するPET薬剤(PBB3)を開発し、認知症モデルマウスとヒトで脳内タウ病変を明瞭に画像化した。この技術によって発症初期からの認知症の鑑別診断、及び疾患の進行度の客観的評価が可能になった。

将来的に、ヒトでの新規治療薬の評価など、認知症の根本治療法の開発への貢献も期待されるという。


お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで