除染・廃炉等の技術を紹介 スペインの原子力セミナー

スペインのM.ラホイ首相の訪日に合わせて、同国の原子力規制体制や廃棄物管理および関連技術について紹介するセミナーが3日、都内のホテルで開催された。後援した原産協会の呼びかけで約200名が集まる盛況となり、日本にとって喫緊の課題である福島の廃炉対策等で解決の糸口となり得る同国の技術や知見に熱心に耳を傾けた。

スペイン原子力安全委員会(CSN)はこの前日、日本の原子力規制委員会(NRA)と原子力安全における情報交換等で協力覚書に調印したばかり。7基の原子炉で総発電量の約20%を賄う同国も、化石燃料の輸入量削減のために今後も原子力利用を継続する必要があるなど、日本と同様のエネルギー事情を抱えている。

しかし、これまでに閉鎖した原子炉のうち1基で廃炉プロセスが進展中であるほか、低中レベル放射性廃棄物の処分センターはすでに1992年から南部のカブリルで操業中。使用済み燃料を含む高レベル廃棄物(HLW)についても一元管理する中間貯蔵施設の建設サイトを決定済みであるなど、廃棄物処分や廃炉、除染に関する経験と知見の豊かさには強い自信を持っている。

このため、今回のセミナーでは福島第一原発での廃炉の課題解決に向けてスペインの関連政府機関および産業界が提供出来る幅広いノウハウと実績が紹介されるとともに、福島復旧支援のための強い意欲が表明された。途中、C.ベラ研究開発イノベーション担当副大臣も挨拶に駆けつけ、この分野における両国の協力・交流が深まることを祈念した。日本側からは経産省の中西宏典大臣官房審議官が汚染水問題を早期解決する技術の募集プロセスを開始したと報告。今月23日の締め切りまでにスペインも含め、世界の技術と知見が広く提案されることへの期待を表明した。

CSNのF.シャファウセン委員長らはまず、スペインの安全規制体制について紹介。NRAと同様、米国の規制委員会をモデルに35前に創設され、委員長以下、4名の委員のほかに220名の専門家を含む総勢450名が施設の安全確保、作業員や国民、環境を有害な放射線から防護するために働いている。法的にも財政的にも独立した存在で、予算は4800万ユーロ。原子力安全と放射線防護の2部門で構成されるが、事務部門は研究開発、検査点検、技術基準の3つに分けられていると説明した。

放射性廃棄物管理の実施機関であるENRESAからはM.モリナ国際部長がスペインの廃棄物管理状況を解説。2006年に政府が承認した第6次総合放射性廃棄物計画に従ってHLWはさしあたり17年から中間貯蔵施設(ATC)で60年間、一元管理し、深地層への最終処分は68年以降に先送りすることになっている。ATCサイトは公募形式で受け入れ自治体を募り、2011年末にビジャル・デ・カニャスに閣議決定。受動的安全性を備えたモジュール式の貯蔵システムで使用済み燃料の量に応じて拡張可能な設備とする計画だ。

放射性廃棄物管理全体の財源は、政府が80年代に構築したファンドに廃棄物の発生者から手数料の形で徴収。昨年の純益は1億7400万ユーロだったが、資金運用により総額は4億2千万ユーロに達したとしている。

このほか、政府の研究機関であるCIEMAT、原子力機器メーカーのENSA社、エンジニアリング・建設大手のTR社がスペイン内外で実績のある技術や福島県での環境回復支援などを提案。廃止措置用機器メーカーのNUSIM社がリモコン式取扱いシステム等で披露した動画も参加者達の関心を集めた。

セミナー閉会に際しては原産協会の服部拓也理事長(=写真)が登壇。福島での事故の教訓を共有し、世界の原子力システムの安全性について抜本的に見直し改善する必要性を指摘した。福島第一の廃炉については、国際協力の枠組の中で、スペインで蓄積された関連技術が活かされることを期待。日本とスペインが人材育成の分野でも連携・協力し、これまでの経験とノウハウを後継者に伝える重要性を訴えた。


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