原産、安全シンポ開く 「信頼回復」テーマに 課題など 内外識者、議論深める

日本原子力産業協会は22日、国民の信頼回復に向けた取組みをテーマに安全シンポジウムを東京都内で開催した。今回が2回目の開催で、2件の基調講演と内外の識者によるパネル討論が行われた(=写真)。

「原子力安全−国民の信頼回復につなげるには」をテーマに、福島第一原子力発電所事故後に混乱がみられた政府等の情報発信の問題点などについて講演とパネル討論で議論が深められた。

基調講演では、前の国会事故調査委員会の委員で社会システムデザイナーの横山禎徳氏が、国会事故調でいう「人災」とは何かについて、社会システムの視点から課題を述べた。同氏は事故解明が専門家であるエンジニアの技術ロジック中心で縦割りの専門家の議論となっていることや、原子力発電の再稼働について国民合意のステップが不明確などと問題点を指摘し、国民共通の「考える枠組み」を社会システムの視点で構築することが必要などとした。そのうえで同氏は国民が情報不足のままでは、日本の原子力システムに何の抜本的な改善も起こらない可能性があると警告し、政府が「文化」風土の中で機能する原子力発電のシステムを早急に作っていくことが必要とした。

また、政策立案プロセスにおける科学的、技術的、工学的視点について基調講演した前英国議会科学技術部ディレクターのデビッド・コープ氏は、英国でも専門家の信頼向上にむけ、現在も議論や取組みが続いているなどとし、政治家と、その意思決定に助言する専門家の信頼性が政策決定に重要だと述べた。

続くパネル討論は、米国より、ポール・ディックマン氏(アルゴンヌ国立研究所上級フェロー)、クレイグ・ハンセン氏(バブコック&ウィルコックス社)を招き、原子力規制庁の山本哲也審議官、電気事業連合会の豊松秀己氏(関西電力副社長)らの登壇のもと、新規制基準適用を踏まえた信頼回復の方策などについて意見交換が行われた。

コーディネーターを務めた田中伸男氏(日本エネルギー経済研究所特別顧問)は、討論の冒頭、原子力事故を経験したウクライナとの対話から、「福島に専門家が呼ばれていない」ことをあげて、日本の対外姿勢に関し問題を提起した。

その上で、国際協力、規制当局と産業界のコミュニケーションのあり方などへ議論を導き、エネルギー安全保障における原子力の重要性を訴えかけた。


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