[インタビュー] 国際原子力機関で働く(2)−IAEA日本人職員に聞く−

前回に引き続き国際原子力機関(IAEA)職員の声を届ける。なお、桐生氏の他にも福島事故時に在籍していた日本人職員の多くが緊急事態センターでのボランティアに関わったことを聞かせてくれた。

国評価担当上級査察官 桐生 みはる 氏

担当地域国で未申告活動をしていないか、地理条件や経済状況、隣国との関係をふまえつつ調査している。カナダを2年半、イランを9年担当し、2012年からは中欧やバルカン諸国を担当している。これまでに80回以上出張し、実際に核物質を扱う現場での検認に力を注いできた。

福島第一原子力発電所の事故が起きた時には、自分も何か役に立ちたいという気持ちで、日本語を話せるスタッフとして緊急事態センターでのボランティアに携わった。

事故処理に対する対応が適切に行われたとしても、国民や国外に発信する情報の伝え方の問題で誤解が生じてしまうことがあるのは残念だと感じる。広報の専門家を配置するなどソフト面の強化も大切なことだと思う。

核データ物理専門官 大塚 直彦 氏

原子核理論で学位取得後、物理と工学の架け橋としての核データの整備を主な関心としている。

理研等を中心に展開されている基礎核物理、JENDLデータベースの整備に象徴される応用核物理、このいずれでも世界のトップを行く日本で経験を積んだことがIAEA採用につながった。

現在、各国の研究炉や加速器等の成果が電子化されたファイルを査読して加盟国に提供するとともに、データセンター間の国際協力調整を担当。

いかなる技術も自然の法則に反することは許されない。核工学の土台とも言うべき基礎定数の信頼性向上を通じてあらゆる平和利用に備える核データ事業は、国境を越え英知を結集して当たる作業に極めてふさわしい。IAEAでその任に当たっていることを大きな誇りとしている。

技術協力局計画管理官 山本 真由美 氏

2010年よりIAEA加盟国の技術協力を支援している。以前は世界保健機構(WHO)や国連に在籍しており、国際機関に15年以上携わっていることになる。

現在担当しているのは欧州地域の3か国で、相手国と連携しプロジェクト作成から実施まで行っている。エストニアとスロバキアは核医学などが比較的進んでいるが、マケドニアは資金面を含めてまだ長い道のりとなりそうだ。

大学時代に留学を経験して、海外で働いてみたいと考えていた。当時はネットもない時代だったため情報収集に苦労したので、今の時代はいいなと思う。現在の仕事に対しては、とてもやりがいがあると感じており、子供もこちらで育てている。IAEAは育児休暇制度など整っており、女性にも働きやすい職場。外務省では若い人たちを支援してくれる制度もあるので活用するのもよいと思う。


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