【原子力ワンポイント】 広く利用されている放射線(19) 科学的研究進むラドン温泉の効能

温泉水にラドンが含まれるのを発見したのはH.S.アレンです。1903年、世界遺産「キングズ・バス(英国)」で見いだされました。日本で鳥取県三朝(ラドン)温泉が発見されたのはその約700年前です。それ以来長く「湯治の湯」として親しまれてきました。

ゆりちゃん ラドンって何ですか?

タクさん キュリー夫妻が発見した「ラジウム」は知っていますか。ラドンはこのラジウムが崩壊してできたものです。ラドンは大気中に浮遊する自然放射能で、日本では、室内の空気1立方メートル中には平均で、ほぼ15ベクレル(本コラムではこの数値をバックグラウンドと呼ぶことにします)含まれています。温泉から出てきたラドンを吸気、あるいは皮膚から吸収すると内部被ばくを生じます。でもその量はとっても少なく、放射線影響を心配する必要のないことが、岡山大学と日本原子力研究開発機構(JAEA)の共同研究で科学的にもはっきりしてきました。

ゆりちゃん どういうことですか?

タクさん 岡山大学は、三朝地区に医学部付属病院三朝医療センターを設置して温泉治療をしています。またバックグラウンドの約300倍に近いラドンサウナ(約4000ベクレル)を設置し、1日1回約40分、隔日で3〜4週間、合計6〜8時間過ごしてもらう治療を行っています。ラドンが生体機能を活性化する性質を利用するのです。一方JAEAは、人形峠環境技術センターで、ラドンの工学的な取り扱いを経験しています。これら2つの組織が協力して、まだよくわかっていないラドンの体内挙動を明らかにでき、生体に及ぼす刺激効果を科学的に証明できれば、ラドン温泉を利用した医療の発展に貢献できるのではないかと考えたのです。

ゆりちゃん それでどうなったのですか。

タクさん 共同研究は2007年度から開始されました。岡山大学とJAEAは、マウス150〜200匹を飼育しながら高濃度ラドンを吸気させる「大規模動物実験設備」を構築しました。また、最近、これまでは計算でしか予測できなかった吸入ラドンの「臓器別の蓄積量」を、動物実験で観察することに成功したとの報告がされました。

ゆりちゃん もう少し具体的に教えてください。

タクさん マウスに約4000ベクレルの高濃度ラドンを吸入させる実験で、脳、肝臓、腎臓など7つの臓器・組織に蓄積されるラドン濃度は極めて小さいことを確認しました。人での分布も同様に考えて良いそうです。もしマウスが1日、この高濃度ラドン吸気したとしても、臓器・組織が受ける放射線量(等価線量)は、わずか0.016〜0.056ミリシーベルトです。山岡聖典岡山大学教授は、2013年2月17日の読売新聞で、人が三朝温泉に30分程入った場合、全身の被ばく線量(実効線量)は約0.001ミリシーベルトと述べています。ラドン温泉による放射線影響を心配する必要はなさそうです。人々は昔から体験で、ラドン温泉が疲れを癒す、またリウマチなどの痛みを伴う症状を緩和することを知っていました。放射線を怖がるばかりでなく、資源の1つとして有効利用する気持ちを持つことも大事なことではないでしょうか。

原産協会・人材育成部


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