日立のウィルファ原発建設計画 英政府の債務保証適用を検討

英国ウェールズ地方でウィルファ原子力発電所建設計画を進めている日立製作所は4日、同プロジェクトに英国政府の債務保証スキーム適用を検討することで英国・財務相と合意し、協力契約に調印したと発表した。必要な外部資金の確保で政府の支援が得られることになれば、供給チェーン関係者のみならず、同プロジェクトに携わる地元社会や将来の投資家にとっても心強いものになると同社は歓迎。資産の適正査定や閣僚の承認を経て、株式の発行と借り入れによる資金調達が可能になるとしている。

今回の合意は、財務相による「2013年国家社会インフラ整備計画」の公表に合わせて発表したもので、政府は2030年までにエネルギーや輸送など官民両セクターにおけるインフラ整備で3750億ポンドの投資を計画。国内の大手保険企業6社から今後5年間に250億ポンド以上の集中投資を取り付けたとしており、日立とその子会社ホライズン・ニュークリア・パワー社によるウィルファ計画に政府の債務保証スキームを通じて資金調達支援する案件も、その他の多くのインフラ計画とともに盛り込まれた。

この信用保証制度は国内で投融資を必要とする社会インフラ案件を推進・支援するために財務省が昨年10月に制定・導入。EDFエナジー社がサマセット州で進めているヒンクリーポイントC原発建設計画でも、総工費160億ポンドのうち65%を保証することについてEDF社と財務省が協議中である。

日立は昨年11月にドイツ資本だったホライズン社の全株式を約890億円で取得。同社が英国で進めていたアングルシー島のウィルファ、サウスグロスターシャー州のオールドベリーにおける原発新設計画を引き継ぎ、世界で唯一運転実績を持つ第3世代設計のABWRを両サイトにそれぞれ2〜3基建設することを決めた。

同社にとって最初の英国プロジェクトとなる「ウィルバ・ニューウィッド(=ウェールズ語で新しいウィルファの意)」では、2018年までにすべてのライセンスや許可を英国政府から取得する計画で、20年代前半に初号機の運転開始を目指している。

今回の合意について日立ヨーロッパ社の羽生正治・副会長兼欧州原子力事業責任者は、「英国政府が次世代の原子力発電所実現に向けたコミットメントを示したと受け止めている」とコメント。ホライズン社のA.レイマントCOOも、「消費者が購入し易く、かつ信頼できる低炭素電力が長期間必要とされている中で、ウィルファ原発は必ず将来のエネルギー・ミックスの一翼を担うことになるだろう」と述べた。

◇  ◇
英国のエンジ3社と枠組契約

ホライズン社は同じ日、英国籍の大手エンジニアリング企業3社からウィルファおよびオールドベリー原発建設計画にエンジニアリングと関連の技術設計サービスを受ける3年間の戦略的な枠組契約を締結した。

契約額は公表していないが18年の本格着工に先立ち、両サイトで許認可や規制に関する承認手続きを進めるための環境コンサルティングと技術サービスがAMEC社、アトキンズ社、キャベンディッシュ・ニュークリア社からホライズン社に提供される予定。3社ともホライズン社の1次外注先として、それぞれの供給チェーンと共に同社と長期的なパートナーシップ関係を構築していくことになる。


お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで