東芝が英原子力事業社の株50%購入で合意 ムーアサイド計画にAP1000

スペインの大手電力企業であるイベルドローラ社は12月23日、保有していた英国の原子力発電合弁企業ニュー・ジェネレーション(NuGen)社の株式50%を8500万ポンド(約144億円)で日本の東芝に売却することで同21日に合意に達したと発表した。福島事故後も原発の新設計画が進展する英国で、ホライズン社を買収した日立製作所に次いで、東芝も受注の機会を探っていくことになる。これで、2023年にセラフィールド近郊に最大360万kWの設備完成を目指すという「ムーアサイド・プロジェクト」に、東芝傘下のウェスチングハウス(WH)社が第3世代プラスのAP1000を供給する可能性が高まった。

イベルドローラ社と東芝のNuGen社株売買合意の事実は、スペイン国立金融市場委員会(CNMV)に対する連絡書簡の形で明らかにされた。それによると、これは非戦略的資産の処分を進めるイベルドローラ社の方針によるもので、売買取引は関連当局の承認、およびNuGen社による建設用地の購入オプション延長が条件。NuGen社は09年に西カンブリアのセラフィールドで200ヘクタールの用地購入オプションを7千万ポンドで確保しており、このエリアから原発建設に最も適した100ヘクタールを選択するとしている。

しかし、同社に25%出資していた英国籍のスコティッシュ&サザン・エナジー(SSE)社が11年に撤退。イベルドローラ社と仏GDFスエズ社の折半運営体制となったNuGen社では、基盤施設計画当局への詳細な建設計画の提出が遅れており、用地購入オプションの延長が必要になるという。

採用炉型については、米国と中国で合計8基が建設中のAP1000が有力だが、これを確実にするために東芝はGDFスエズ社からもNuGen社株を一部買い取り、50%強の取得を目指すとの情報もある。英国政府は既に、AP1000の包括的設計審査(GDA)において、安全面に関する暫定的な設計容認確認書(iDAC)と環境影響に関する暫定的な設計容認声明書(iSoDA)を11年に発給。残された課題の解決次第で新設計画への採用が可能になると見られている。

英国の原発新設計画では現在、仏電力グループがアレバ社および中国の2社と組んで、欧州加圧水型炉(EPR)を採用したヒンクリーポイントC計画を進めており、昨年10月に完成原発による発電電力の買い取り固定価格が決定した。日立製作所は、ウィルファ計画を進めていたホライズン社を12年に買収。採用設計となるABWRについては昨年4月からGDA審査が開始されている。


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