【新春 特別インタビュー】自主性を基本に向上 世界トップで活躍 自分を知り故障なく

マラソンや駅伝は今や国民的スポーツになっている。ドラマがあり、学ぶところが多いのが人気の理由かもしれない。そこで、新春特別インタビューとして、中国電力陸上競技部に所属しアテネオリンピックで5位入賞など世界のトップランナーとして活躍した油谷繁同陸上競技部コーチにお聞きした。ご自身の経験に加え、若手や中高年ランナーへのアドバイスなどもいただいた。

おりしも昨年は、東京五輪の開催が決まり、日本全国が沸き立った。世界をめざす選手たちに大きな目標ができた。「世界で戦うチャンスに、フルマラソンをめざす選手、活躍できる選手を育成できればと思います」と話す。

自身、アテネオリンピックでは5位入賞を果たした。世界陸上の出場とあわせて世界のトップレベルで戦った。

「初マラソンから手ごたえがあり、2回目のマラソンで2時間7分台を出した。マラソンなら世界で戦えるという手ごたえをつかめた。世界一になれないことはないと感じた」というだけあって、走るごとに自己記録を更新し、自分でたてた練習メニューを順調にこなし、世界のトップレベルに肩を並べた。

「当時は佐藤選手、尾方選手という世界トップクラスのマラソンランナーが身近にいましたし、個性が3人とも違う点も逆に良い作用をしたのだと思います」と振り返る。

競技生活、山あり谷ありかと思えば、「とくにスランプはありませんでした」とあっさり。

その秘密は「故障しないこと」のようだ。「自分の中の足の状態の感覚など、足の状態が良くないな、というときには直感が働きます。状態を見ながら、次の日に練習を繰り延べるなどの危機管理能力のようなものがあったように思います」。

自分でたてた練習を監督、自分の体調と相談しながら進める日々。「柔軟に考え、いかに完成度を高めていくかが重要です。ともすれば、やっているうち理想の練習を追い求めてしまうものですが、できるかぎり現実的に考えて練習を進めることが大切」と強調する。

世界陸上もオリンピックでも「緊張しなかった。早く走りたいと思いました」と、仕上がりの順調さがフィジカルの自信となり、メンタルも維持する好循環に。「メダルがとれず残念でした」とはいえ、5位入賞の実績。世界のトップランナーの実力を発揮した。

そして現在は陸上部競技コーチとして、後進の指導にあたる立場に。「自分のやってきたことを選手たちに押し付けないように心掛けています。選手たち個々の状態に応じた練習が重要なので、自分のオリンピック出場経験などはあくまで参考であって、選手たちがやる、やらないは自主性の問題で、そこができる選手は強くなるんです」。

選手が自主的に努力し自分を高めていくことが基本というのは、スポーツに限らず、社会生活でも大事なことだ。スポーツ教室などの場でも若手に「からだを動かすようなことがひとつのきっかけになればと思いながら指導している」という。

最後に昨今とくに増えている中高年ランナーに、「楽しく走るには無理しないことです。ゆっくり走るのが基本。仲間と一緒に走ると長い距離を走れるし楽しく走れると思います。自分で走りに行こうという気持ちを大事に」と、やはり自主的に、前向きな姿勢を引き出す工夫を助言する。


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